「分家住宅」の売却――“土地の縛り”のほどき方

農地関連の土地の処分でもやっかいなものが「分家住宅」だ。ほとんどの不動産会社に相談を持ち込んでもほぼ断られるという。そんな分家住宅をどのように売却するか、そのヒントをさぐる。

田中裕治2023/12/14

車両置き場として1300万円で売却

売却活動は、建物の建築・使用ができず、市街化調整区域で「建物の建築・使用ができない物件」ということを考慮した価格設定で「古家付土地」として販売を開始しました。
すると、多くの問い合わせがあったものの、建物を使えない、建て替えができない(再建築不可)ということをお伝えすると、みなさんフェードアウト。予想はしていたものの、改めて難しい案件と感じさせられます。

それでもあきらめず、問い合わせて来られる方に説明を続けました。そんな中で以前よりつき合いのあった地元の不動産会社の代表者の方に紹介をすると「車両置場」として、検討してみようということになりました。

そうした販売活動が功を奏して、建物の建替え等ができない土地でしたが、1300万円という金額で売却することができました。さらに売却にあたって依頼者が相続不動産売却の際の譲渡所得税の特別控除の特例(相続した空き家売却時の3000万円特別控除)を利用できるように段取りを行いました。

引き渡しに至るまでには、古屋の解体撤去や電柱の移設など対処すべきものもありましたが、これもトラブルなく終わり無事に引き渡し、取引を終えました。

市街化調整区域の地目変更は家の解体前に行う

分家住宅は属人的な建物のため、今回のように相続人であっても建て替えはもとより、使用することが認められない場合があるまさに「負動産」です。しかし、さまざまな用途で土地が欲しいという需要はあります。要は売却にあたってチャレンジするかどうかです。

さらにこうした市街化調整区域の不動産の売却には重要なポイントがあります。
それは今回ご紹介した例のように市街化調整区域の戸建(古家付土地含む)で、土地の地目が「農地」になっている場合は、必ず「建物があるうち(古家の解体前)に地目変更登記(農地から宅地への地目変更登記)」を完了しておくことです。

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なぜなら建物(古家)を解体したあとに地目変更登記をしようとすると、その土地は農地扱いなるため手続きが煩雑になったり、農地としてしか売却できなくなってしまう場合があるためです。
 不動産によっては、その手順には順番があって、それを間違えると、さらに売りづらくなるのです。

『売れない不動産はない!』(田中裕治著/叶舎刊)より

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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