実録「空き家処分」――抱え込んだ4軒の空き家に立ち向かう!

山梨県内にそれぞれ特徴的な4軒の空き家を抱えるAさんの空き家売却の体験記。いざ、売却しようとすると、いずれも予想外の売却価格、かさむ費用……簡単には進まない空き家売却の現実。

Gold beans.編集部2023/11/28

最近の農業人気の高まりから東京から田舎で農業をしようと何組かの夫婦が見学に来たが、あまりの原野ぶりに見学に来た人は、気絶しそうな雰囲気で、相次いで断られた。
そこで、「原野化してしまった家に行きつくまで私道だけでも」と、徹底的に草刈りをして、2トントラックが通れるようにした。

さらに原野となった田畑の草もほとんど刈り取り、居間から富士山が見えるように、秋山さんの住んでいた当時に状況を再現した。
「ここまでやると、実家ですからやっぱり愛着がわいて気ましてね。半分ぐらい売りたくない気持ちにもなってきました」
と秋山さんは笑う。

家の窓からは富士山、手前には甲府市内も一望

残置物処分で最大のネックは膨大な蔵書

とはいえ、実際のところは周辺をきれいにするだけで力尽き、家財道具の撤去にはまだ手が付けられていないのが現実らしい。

その中でもとくにやっかいなのが父親の残した数万冊以上の蔵書で、これを廃棄物として処分するには大金がかかってしまう。甲府市内に本を溶かす段ボール再生処理工場を見つけ、タダで引き受けてもらうことになった。
これで本の処分にメドがつき一安心かと思いきや、その本の運搬を業者に頼むにしても、結構な費用がかかり、自分でトラックを借りて運び出すにしても、延べ日数すると30日以上かかるので、この古本の処分だけでも数十万円を超えてしまうかもしれない。

ブックオフに相談すると、「1冊も引き受けられないですね」にべもない答えが返ってきた。
それもそのはずで、残された蔵書は昭和時代の左翼系の本がほとんど。研究資料になるのではと図書館に寄附を申し出たが受け入れを拒否された。ちなみに、山梨はごりごりの保守王国だ。

定年サラリーマンに負担できない処分費用

トラックいっぱいの残置物。運んでも運んでも減らない

秋山さんの実家の近所は似たような状況の空き家がどんどん増えている。
都会の人に農業体験のできる田舎の家として借りてもらうには、やはり数百万円の事前投資が必要だ。定年退職したサラリーマンにそんな負担はできない。タダで引き受けてくれる業者もなく、最低でもマイナス500万円、つまり500万円積んでも引き取り手がないのが実情なのだ。


もちろん、こうした状況は自治体もわかっており地方では空き家バンクという制度を行政が盛んにPRしているが、実質的にはまったく機能していない。
その実情については項を改めてお伝えしよう。

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