実録「空き家処分」――抱え込んだ4軒の空き家に立ち向かう!

山梨県内にそれぞれ特徴的な4軒の空き家を抱えるAさんの空き家売却の体験記。いざ、売却しようとすると、いずれも予想外の売却価格、かさむ費用……簡単には進まない空き家売却の現実。

Gold beans.編集部2023/11/28

空き家処分が相次ぎ、行政が民間に廃棄物処分場を造らせたものの、処分費は高く、処分地が足りなくなり、遊休地が地上げされることもある。
「田舎で空き家を相続しても、赤字が出なければ幸運なほうなんですよ」
と秋山さん。田舎の大きな家屋の取り壊し、残置物処分まで丸投げすると、大赤字になるということも、空き家は放置される原因になっている。
しかも、空き家とはいっても住宅だから、建っている限り固定資産税や都市計画税は6分の1に減税されているので、誰もが費用をかけてまで解体ようという気がおきない。「自分の持っている土地に道路や公共施設が建ち、買収されるのを待つ、棚ボタを狙う人もいる」
(秋山さん)というわけだ。

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「甲府市の中心・駅近」マンション、戸建ても赤字の可能性も

甲府市内から見える富士山

秋山さんが抱えるもう1つの空き家が、母親が最期に住んでいた甲府市内のマンションである。
このマンションは立地もよく甲府駅から1駅の5分の酒折にある。駅のホームからそのマンションが見え、駅から歩いて数分の「駅近物件」だ。
立地もよく、マンションのベランダからは富士山がよく見えることら高く売れるだろうと秋山さんは期待したが、周辺相場は買った時の数分の1の580万円まで下がっていた。
甲府市酒折は山梨学院大学、甲府東高校があり、とくに山梨学院大学はサッカーや野球、駅伝統の学生スポーツの活躍で有名になり、学院関係者や生徒数は増えている。甲府市内でも活気のある地域である。そんな活気のある地域だが、不動産価格の下落は著しい。

こちらの物件も、母の荷物を撤去するのに数十万円かかり、さらに壁紙の張替えなどのリフォームに100万円近くかかる予定だ。
「新築で買ったときの値段は3000万円ほどだったのに……」
と秋山さんは肩を落とす。

そして、このマンションの近くには、そう遠くない将来に秋山さんが抱え込まざるを得ない空き家予備軍がある。現在は秋山さんの叔母さんの存命中で、秋山さん自身がときどき介護に訪れている。
こちらの家は戸建てで、県内の不動産会社に売却価格を聞くと最大で1470万円。しかも、家の撤去と大量の家財道具の処分には500万円以上かかるという。甲府市の中心街にあるマンション、戸建てでもこのありさまである。

原野化してしまった田畑付の実家

最後のもう1件の空き家は、秋山さんが生まれ育った実家である。

場所は甲府駅からクルマで40分ほどにある自宅からは富士山も一望できる地域。
ただ、敷地の草を刈るだけで数十万円の費用がかかる。さらに家財道具の撤去、処分に100万円以上かかる見込みだという。

家自体は築80余年の古家だが、中途半端にリフォームしてしまったので、古民家的な風情もなく、そういった付加価値もない。
しかも、敷地には畑や山林などが付属しており、登記している分だけでも広大な原野がある。
養蚕が主産業だった時代は価値のある土地だった。しかし、養蚕が廃れて40年あまり、田畑に行く道路は原野に戻ってしまい、田畑の価値もなくなってしまった。

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