マンション管理組合は何もしなくてもOK? 「第三者管理」の落とし穴

最近の分譲マンションが抱える問題として役員のなり手不足、管理組合活動への無関心などがある。そのような状況の中で国土交通省は標準管理規約等を改正し、それまで区分所有者に限定していた管理組合の理事や監事に外部の専門家が就任できるようにした「第三者管理」方式というものがつけ加えられた。この第三者方式を採用する管理組合も増えているというだが、問題点もあるという。

木村和人2023/11/14

こうして管理会社は儲けている

大規模修繕は数千万から億単位の費用がかかる

そもそも管理会社は管理組合からの管理委託費だけで利益を得ているわけではありません。
各種点検・修繕工事など外部業者に支払う経費にも儲けを乗せています。実はこのことを知らない理事会、理事長は少なくありません。
中には相見積もりをとったり、工事業者への価格交渉を依頼する管理組合もありますが、管理会社にとってはこんなことは折り込み済み。管理組合が納得する程度の値引きした見積りを出すといった対応をしてきます。

もちろん見積りを入手し、発注し、工事に立ち会い、支払い手続きをし、報告をするなどの手間を掛けた分の正当な手数料を得ることに問題はありません。しかし、管理組合にその内容をチェックする知識も経験もなければ、管理会社だけにとって有利な内容に誘導されてしまうでしょう。

現状では管理組合があっても、多くのマンションではこうした状態にあります。
この状態でさらに管理会社が発注側と委託先の両者を兼ねる「丸投げ第三者管理」になってしまっては利益相反の懸念があるうえ、所有者の資産を守るための場である管理組合の活動機会と経験がなくなりかねないことを認識すべきでしょう。
まずは「第三者管理」本来の意味を知らずにあたかもこれが代表的な制度であると誤解しないでを招くような報道は控えて欲しいものです。

「第三者管理」のあるべきスタイル

管理会社の役割をすべて否定しているわけではありません。
マンション管理会社はプロとして管理委託契約に基づき、マンションを維持するためにときには厳しく理事会や管理組合に意見や提案を行う存在として不可欠な存在です。

繰り返しますが、本来あるべき第三者管理とは「役員の一部に専門家が参加し、理事会運営や管理組合活動の自立を支援するもの」です。あるNPO法人では管理組合から理事長派遣の依頼を受けた場合でもあえて理事長ではなく、副理事長を派遣するそうです。

高齢や多忙を理由に役員就任を辞退していた区分所有者たちであっても、経験豊富な副理事長が“素人理事長”を補佐しながら理事会を指導することで効率の良い管理組合運営を経験することができます。これまでも一度は破たんしかけた管理組合を立て直し、主体的な運営ノウハウを得ることに成功した例もあります。これこそが管理組合の将来まで見据えた理想的な第三者管理でしょう。

冒頭の例のように新築時からこの形態を導入して区分所有者に理事会運営の経験すら与えないケースもあります。また、「(丸投げ)第三者管理にすれば管理費が安くなります」と提案する管理会社もあります。

国土交通省は有識者を招いて「今後のマンション政策のあり方」を検討しているようですが、管理会社が利益相反関係にある管理組合の理事会業務を受託することを禁止するなり、厳しい基準を設けることが必要だと思います。
ただでさえ、区分所有マンションでは、管理については無関心層が増殖しています。マンション管理は基本的に区分所有者が行うという原理原則を徹底し、将来直面するであろう老朽化したマンションの維持管理、ひいては管理放棄された空き家マンションを増やさないためにも、管理組合の機能不全の防止のための施策を考えるときがきています。

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この記事を書いた人

木村和人

木村和人ケラー・ウィリアムズ東京 不動産エージェント(保有資格:宅地建物取引士、行政書士など)

当時マンション供給戸数トップの大京に新卒入社で5年間在籍、その後26年間は在日オーストラリア大使館、2018年から豪州最大手不動産会社に勤務、2021年に独立してコンサルタント業と不動産エージェント業を兼業している。趣味はテニス、マンション管理、コントラクトブリッジ。

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