【倒産急増/貨物運送】すぐに荷物が届く便利な生活は終わりを告げる

4月、貨物運送業界にとっての2024年問題の幕がついに上がった。慢性的なドライバー不足のうえに、働き方改革によるドライバーの勤務時間の厳密な管理。こうした状況でなかで貨物運送会社が生き残るために必要なこととは何か。

立川昭吾2024/05/28

人手不足解消の政策が裏目?

一口にドライバーといっても、タクシーやバスもあれば、軽貨物、大型トラックといろいろなものがあって、ドライバーの移動(転職)によって、急な人手不足に直面させられる会社も出てくるでしょう。

そもそも日本の労働人口はどんどんと減ってくるわけですから、労働問題はさまざまな業界が抱えた共通課題で、どんな業種の会社もその対策に追われています。そのなかでもこの問題のインパクトが大きいのが、この貨物運送業界なのです。

一方で物流の量は増え、倉庫業は堅調なので、貨物運送業も仕事はあるのだけれど、利益が上がらないというジレンマを抱えています。そのため生き延びるために何をするかというと、粉飾決算に走る会社も出てくるでしょう。
その理由はバランスシートを整えないと、銀行からの借り入れがままならないためです。実はこの貨物運送業の会社は、粉飾決算が多い業種なのです。

1990年以降、日本の中小企業はいくつか大きな波をかぶってきていますが、なかでも一番大きな波は2008年のリーマンショックでした。
このリーマンショックは、金融や製造業に与えたインパクトは大きかったのですが、貨物運送業は、あまり影響を受けませんでした。そのため製造業に比べ会社の体質改善が進まなかった。しかし、潜在的なドライバー不足という問題を抱えており、この働き方改革によって、一気に厳しい状況に追い込まれました。

国も物流を担う貨物運送業のこの状況を何とかしようと、男女平等にすることで女性の参加を促し、高齢者でも元気な人に働いてもらえるようドライバー条件緩和のためにさまざまな手を打っています。
とはいえ、働く人に無理をさせるわけにいかないので、他の業種と同じような職場の改善や、給与水準の改善など働き方改革を進める必要もあって 、貨物運送業に対しても、職場の改善や残業時間の短縮などを義務づけたわけです。

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立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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