東京市場が崩れた要因と、もう一段、株価を上昇させるための条件

4万円を超えた東京市場の株価に勢いがすっかりなくなってしまった。その理由と次の株価上昇のために必要なこととは。

望月純夫2024/05/21

人工知能、自社株買い神話も薄れる

新NISAの人気株だっただけに失望感は大きい。また、人工知能(AI)分野の需要期待が根強い半導体関連では、市場予想にわずかに届かず、「物足りない」との反応を招いた。
具体的には製造装置の東京エレクトロンは、2025年3月期の純利益予想が前期比22%増(4450億円)と市場予想の同24%増の4530億円に届かず、株価は3月末比で9&下落した。
検査装置のアドバンテストも市場予想を大きく下回り、決算発表の翌営業日には7%安と急落した。

投資尺度の割高感・割安感を示す予想PER(株価収益率)が17倍に近い水準にあり、やや割高感が目立つ。17日現在の日経225のPERは16.55倍、EPSは2343円、24年3月末ではPER16.90倍、EPS2295円でややプラスに転じている。
20日の損保株の発表次第では、また多少EPSは増加する可能性は残されている。

自社株買い銘柄を発表した銘柄の中では、トヨタ、KDDI、ENEOS等は株高効果が打ち消されている。
ソニーや三井住友FG等は高値を更新している。ソニーに関しては成長戦略が明確であった。三井住友フィナンシャルは、今後も緩やかであっても金利引き上げの流れが続くことで利益の増加が見込めるとの判断により高値を16年半ぶりに更新した。信越化学は1000億円の自社株買いを17日に発表。なお、取得した自社株買いは消却し、資本効率を高めるとしている。

「自社株買いは買いという神話」は崩れだしているだけに、成長戦略に選別の目が必要である。

※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。

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この記事を書いた人

望月純夫

望月純夫株式ストレジスト、コンサルタント、ラジオパーソナリティ

1949年生まれ、静岡県出身。1971年慶應大学法学部卒、同年山一證券入社。1985年新日本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。

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