1949年生まれ、静岡県出身。1971年慶應大学法学部卒、同年山一證券入社。1985年新日本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。
PREは14倍から18倍が目安に
昨年1月から始まった日経平均の上昇は続き、遂に3月4日には引値ベースで4万円の壁を、3月29日には4万1000円の節目も超えた。
背景には日本経済の企業の構造的な変化がある。円安の影響も大きいが、台湾大手半導体企業TSMCの熊本に工場を建設(2021年10月)するところから始まったといえる。
これは令和の黒船と言ってもおかしくはない。日本ではデフレが蔓延し、大卒の初任給が22万~23万円に固定されてきた。当時の熊本県の平均大卒初任給19万4443円で、2023年春入社が28万円と発表された時の驚きは忘れられないものがあった。これで閉塞感が完全に破られた。23年、今年もこの流れに乗るような形での連続賃金引き上げに大手企業を中心踏み切っている。
これを受けて日銀もマイナス金利の解除を決断した。人手不足も恒常化し、サービス価格も上昇している。また、社外取締役の定着など企業統治の改善も寄与して、事業構成を見直す企業も増えている。内部留保を効果的に使う動きも見られるようになってきた。
企業間格差はあるものの、収益構造も強化されている。
デフレの時代の投資尺度では、PERは14倍から16倍だったが、これからインフレの時代に入りこの投資尺度は、PER16倍から18倍に変わると考えと分かりやすいと思う。
16倍だから割高ではない、デフレの時代の産物に過ぎない。3月18日の引値3万9740円に対するPERは16.79倍、一株当たり利益(EPS)は2366円となっている。過去の物差しでは割高と言えた。しかし、この物差しを少し変えて、PER18倍まで買ってみても、4万2500円が適正価格と考えることが可能となる。
つまり、割高感はなくなり、海外の平均的な水準になったに過ぎない。需給関係も良好で、低迷する中国から流出した資金が米印日に流れ込んできているのである。