北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。
夏のエアコンに要注意、男性にも多い
冷えは「万病のもと」といわれ漢方では「未病のサイン」の症状の1つです。
ふつうの人は寒いと感じていない程度の温度なのに、手足や腰などが自覚的にとても冷たく不快に感じられる症状を一般に「冷え症」といいます。
寒い冬だけでなく夏のクーラーや冷飲食の摂取も冷えを招きますので注意が必要です。
筋肉量が少なく、脂肪が多い特徴を持つ女性に多いといわれていますが、男性にも起こる症状で加齢による筋肉量低下や老化に伴う基礎代謝の低下で起こるケースがあります。男性の冷えは手足などの冷えだけでなく頻尿や腰痛、肩こりといった症状で気がつくことがよくあります。
冷え症の改善は、ただ温めればよい!のではなく、冷えのタイプもひとそれぞれです。漢方的には気血水のバランスが不調になると冷えを伴うことが度々あります。
自分自身の冷えの原因を知ることで自分に合う漢方薬をみつけて改善していきましょう。
【陽虚型】新陳代謝が不活発なためにからだが温まり切れない
元気がなく不活発で、体温も低く、特に手足が冷えやすいタイプ。老人や大病後、あるいは身体虚弱な人に多く、温かい飲み物を好み、尿量が多いのが特徴です。
八味地黄丸(ハチミジオウガン)
【主な症状】手足や足腰が冷えることが多い、足腰が疲れやすい、夜中にトイレに起きる
新陳代謝が衰えたためにからだが温まらず、同時に足腰の冷え、排尿異常、夜間尿、耳鳴りなど高齢者に多くみられる症状です。
【効果】8つの生薬で加齢により衰えた基礎代謝をアップし、主に下半身を温めながら症状を改善します。
【成分の効能】腎をサポートする六味丸に腎を選択的に温める桂枝(ケイシ:シナモン)と附子(ブシ)が加わることで加齢に伴い起こる諸症状を改善します。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
【主な症状】手足と共にお腹などからだの深部まで冷える、しもやけができやすい
冷えによって四肢に血行障害が起こり、手足と共にお腹の中までの冷えやしもやけができやすいという人に用います。
からだが冷えると冷えが悪化する、冷えとともに下腹部の痛みや嘔吐が起こることがある、月経痛が強い方にも用います。
【効果】からだを温める生薬で血行を促して、手足などの末端を温めると共に、体の内部にもはたらき、冷えや冷えによる頭痛や腹痛といった痛みなどの症状を改善します。
【成分の効能】血の質や量を改善しながらからだを温める当帰四逆湯にからだの芯を温める呉茱萸(ゴシュユ)と生姜(ショウキョウ)が加えられていることで末端の血流も温めます。