北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。
寝付くのに時間がかかる、夜中に何度も起きる、朝早く目覚めてしまいその後眠れない、などの症状に悩んでいませんか?
不眠症の多くはストレスや生活習慣の乱れ、また夜間尿や更年期によるホルモンの乱れなどの身体的要因にも影響されます。
また、不眠に悩む人の割合は加齢と共に増えていきます。これは必要な睡眠時間が短くなり、睡眠・覚醒のメリハリが小さくなることが関係しているといわれています。
漢方では、眠りには人の陰と陽の「気」の交代が睡眠と覚醒のリズムをつくっていると考えます。日中は「陽」の「気」が支配して元気に活動し、夜になると「陰」の「気」が盛んになりゆったりと心静かになり、やがて眠りに就くメカニズムです。現代でいう交感神経(活動する時に働く神経)と副交感神経(休息やリラックスする時に働く神経)のスイッチの切り替えがスムーズにできないために不眠症に陥るとも考えられます。
眠りを妨げる原因に働きかける「漢方薬」で質の良い眠りを取り戻しましょう。
不安感で眠れない、ささいなことが気になる気滞タイプ
【こんな場合に…】
情緒が不安定、不安感、イライラ、イベントや試験の前に緊張して眠れない
「気滞」とは、気の巡りがスムーズでなく「気」が停滞している状態です。気分がふさぎ不安感が常にあり「今夜も眠れないのではないか」という不安の連鎖で寝つきが悪くなります。
気滞タイプには、気の流れをスムーズに巡らせて症状を改善する漢方薬を用います。
*柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
【主な症状】
体力中程度以上、ストレスなどでイライラし、思い悩んでしまう方の不眠
驚いて目が覚める、イベントの前などに緊張して眠れない、動悸、便秘、不安などを伴うこともあります。
【効果】
「気」を巡らせ、からだにこもった熱を冷ますと共に、心を落ち着かせることで脳の興奮を抑えて症状を改善します。
【成分の効能】
柴胡(サイコ)・黄芩(オウゴン)で気を巡らせ、竜骨(リュウコツ:哺乳類の化石化した骨)・牡蛎(ボレイ:カキの貝殻)で体にこもった熱をさますことで気持ちをリラックスさせ症状を改善します。
*桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
【主な症状】
体質虚弱でささいなことが気なる、驚きやすいなど神経過敏な方の不眠
ちょっとうとうとしただけで夢を見ることが多い、動悸など精神の不安定を感じる、冷えや脱毛傾向が伴うこともあります。
【効果】
気と血の巡りを整えながら、精神安定作用を図ることで症状を改善します。
柴胡加竜骨牡蛎湯の体質虚弱タイプの方向けです。
【成分の効能】
気血のバランスを整える「桂枝湯」にからだの熱をさます竜骨・牡蛎が加わっていることで精神安定効果を発揮し症状を改善します。