イライラ、不安、疲れているのに眠れない…不眠に効く漢方と生活習慣の整え方

不眠の原因はストレス、自律神経の乱れや加齢による体質変化などさまざま。それぞれの原因に合わせた漢方の選び方、不眠を解消するための生活習慣の改善法。

斉藤明美2025/07/07

イライラ、怒り、興奮で目が冴えて眠れない気逆タイプ

【こんな場合に…】
神経過敏、怒りっぽい、イライラ、のぼせ・ほてり
「気逆」とは本来上から下に流れる「気」が逆の方向に流れる状態です。からだの中で熱くなった「気」を十分に鎮めることができないために不眠が生じます
イライラして怒りやすく、神経過敏で寝つきが悪く、一旦寝付いても夜中に目覚めやすい、夜になるとかえって目が覚めてしまうこともあります。
気逆タイプは気の流れを上から下に導く働きの漢方薬を用いて症状を改善します。

*黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
【主な症状】
体力中等度以上でのぼせやほてり、赤ら顔の傾向があり、イライラ、精神不安、頭が冴えてなかなか寝付けない不眠。
また、下肢の冷えや疲労感などを感じない方に。
【効果】
カラダの熱を冷まし、興奮を静めることによりスムーズな入眠をサポートします。
【成分の効能】黄連(オウレン)、黄芩で上半身、黄柏(オウバク)で下半身の熱を冷まし、その熱を山梔子(サンシシ)が体の外へ追い出すことで症状を改善します。

*抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)
【主な症状】
ストレスを受けやすい、イライラしやすい、ちょっとしたことで怒ってしまう方の不眠。
歯ぎしり、こめかみがぴくつく、足がつりやすいなどの症状を伴うこともあります。
【効果】
気の高ぶりを抑えながら、血を補うことで心身のバランスを整え自律神経を安定させて症状を改善します。
【成分の効能】
釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡で神経の高ぶりを鎮め、当帰(トウキ)と川芎(センキュウ)は血行を促進し、更に胃の働きをサポートする陳皮(チンピ:ミカンの皮)と半夏(ハンゲ)が加わっているので胃の弱い方にも安心して服用いただけます。

些細なことがきになって眠れない気虚タイプ

【こんな場合に…】
倦怠感、気力低下、食欲不振、貧血傾向・血色悪い、食後の眠気
「気虚」とはストレスなどによりエネルギー不足となった状態です。疲れているのに眠れない、熟眠感が得られない状態となります。
つまらないことが気になる、くよくよ、びくびくして眠れない、倦怠感を伴うこともあります。
気虚タイプには「気・血」を補い巡らせることで症状を改善する漢方薬を用います。

*酸棗仁湯(サンソウニントウ)
【主な症状】
心身が疲労し、疲れているのに気が高ぶって眠れない、特に頭が疲れて目が冴えて眠れない不眠に効果が期待できます。
寝汗をかきやすい、昼間眠い、眠りが浅い、不安、抑うつ、動悸などの神経過敏症状をともなうこともあります。
【効果】
心の働きをサポートしながら、体の疲労や精神不安を改善することで入眠を促します。
不眠だけでなく昼間の眠気(嗜眠)にも効果があります。また高齢者や体力低下した方の不眠症に効果的です。
【成分の効能】
主薬の酸棗仁(サンソウニン)が脳の酸素不足を改善することで精神的不安や動悸を改善し、茯苓(ブクリョウ)・川芎・知母(チモ)・甘草(カンゾウ)が協力して心身の疲労を回復させる働きにより症状を改善します。

*加味帰脾湯(カミキヒトウ) 
【主な症状】
虚弱体質で、心身が疲れ、ストレスによる不安や落ち込み、眠りが浅く夢が多い方に。
血色が悪い、貧血傾向、のぼせ、ほてり、イライラ、胸苦しいなどの症状を伴うこともあります。
【効果】
消化器の働きを助けながら、気を巡らせ、血を補うことで気持ちが落ち着き、昼と夜のメリハリがつくようになり睡眠が充実してきます。
【成分の効能】
胃腸の機能を高めながら心のパワーを改善する「帰脾湯」に、気の発散を助ける柴胡とのぼせなどの熱症状を去る山梔子が加わっていることで症状を改善します。

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この記事を書いた人

斉藤明美

斉藤明美薬剤師・医学博士

北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。

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