北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。
春からゴールデンウィークが終わる気候や環境の変化で体温調節や心の疲労に順応できず、心身の不調を起こしやすい「春バテ」が出やすいシーズンです。
わけもなくドキドキする、不安にかられる、神経が過敏になりささいなことが気になる、小さなことでイライラする、気分がふさぐ・もんもんとする、のどがつまったような感じになる、などの症状は出ていませんか?
こころとからだのバランスが乱れる原因は、漢方では「気」がバランスをとれなくなった病態と考えます。
「病は気から」といわれるように、健康を保つためには「気」の巡りを整えることが大切です。「気」が巡れば、「血」や「水」の調和が整い、こころとからだのバランスがとれるようになるので元気を取り戻すことができます。
こころとからだの両方のバランスを整えることが得意分野である漢方薬で「元気」をとり戻しましょう。
憂うつな気分・不安と共にのどの詰まりや動悸がみられる「気滞」タイプ
このタイプの人は、不安感やくよくよした抑うつ感といった精神症状のほか、のどが詰まった感じ、胸や背中の閉塞感、動悸などがみられます。
気の巡りが滞ることが原因となるため、改善させるには「気」の巡りを整え、発散させる作用の漢方薬を用いることで身体とこころのバランスを整えます。
*半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

【主な症状】不安、うつなどの精神症状、喉・食道あたりのつまり感
動悸、めまい、吐き気などを伴う不安神経症、神経性胃炎・吐き気、不眠を伴う症状。
また、妊娠中の咳やつわり、しわがれ声、むせやすい人に用いると効果があります。
【効果】ストレスにより滞った気の巡りを整えながら、上にのぼった気をおろし、のど周辺の余分な水をとり去ることで、気分がふさぐ、ささいなことで不安にかられるといった不安神経症、のど周辺の違和感などを改善します。
【成分の効能】半夏(ハンゲ)と厚朴(コウボク)で、のど周辺の水の巡りを整えながら、上にのぼった気をおろし、茯苓(ブクリョウ)で不安を取り除き、蘇葉(ソヨウ:紫蘇の葉)の芳香で気持ちをのびやかに整えることで症状を改善します。
*香蘇散(コウソサン)
【主な症状】胃腸虚弱で体力がなく、神経質で気持ちの落ち込みがある
頭重、めまい、みずおちのつかえ、耳鳴りを伴うこともあり、体力がなく胃腸が弱い人の風邪の初期にも用います。
【効果】気の巡りを整え、血行を促進しながら、神経過敏症状や気持ちの落ち込みを改善します。
【成分の効能】蘇葉が気を巡らせながら外へ発散させ、香附子(コウブシ)は血行を促進して精神不安症状を改善します。陳皮(チンピ)・生姜(ショウキョウ)・甘草(カンゾウ)は胃の働きを整え、吐き気や食欲不振などの胃腸虚弱をサポートします。紫蘇には古くから「魚蟹の毒を解す」と言われ、魚介類で起こった蕁麻疹にも用います。