「春バテ」の体調不良を改善 イライラ・不安…自律神経の乱れを整える漢方薬9選

体がだるい、気持ちが落ち込みやすい、イライラや不安……そんな「春バテ」特有の体調不良は自律神経の乱れが原因かもしれません。心身のバランスを整える漢方薬7選をご紹介します。

斉藤明美2025/05/24

頭に血が上りやすく、イライラして不安になる「気逆」タイプ

このタイプの人は、頭に血がのぼってイライラして不安になる、怒りっぽい、突然ドキドキするなどの症状がみられます。いわゆる「パニック症候群」に代表されるタイプです。
これは気が上へ突きあがって起こる症状と考えられるので、「気」をゆるめながら、下へ引き下げる作用の生薬を含む漢方薬を用いることで神経が落ち着いてきます。

*柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
【主な症状】体力中等度でイライラしやすい、不安・緊張、不眠、動悸。
寝つきが悪い、少しの物音にも反応する驚きやすい方。
【効果】疲労やストレス・不安で「気」が巡らなくなり、身体に熱がこもって、その熱が頭にのぼって脳が疲労したために起こる症状です。気を発散させて緊張を和らげ、心身を鎮めます。
【成分の効能】柴胡(サイコ)と黄芩(オウゴン)で「気」を巡らせながら緊張を緩め、竜骨(リュウコツ)・牡蛎(ボレイ)でからだにこもった熱を冷ますことで、脳の興奮を抑えて心を落ち着かせます。

*苓桂棗甘湯(リョウケイカンソウトウ)

苓桂棗甘湯

【主な症状】不安感が非常に強く、緊張により神経が高ぶりやすい、イライラする
臍(へそ)の下から突き上げてくる突然の動悸や胸がつまるように感じる、めまい、のぼせ、たちくらみ、頭痛、不安・神経症などのパニック症状、不眠傾向。
【効果】過剰にのぼせ上った「気」を引き下げ、筋肉の緊張を和らげながら、水を巡らせることで、「こころ」を穏やかに整え症状を改善します。
【成分の効能】桂皮(ケイヒ)と甘草の二味が「気」を下に引き下げ、大棗(タイソウ・なつめの実)は急迫する緊張を緩め、茯苓には水はけ、鎮静作用があり、これら4つの生薬の働きで症状を改善します。

*桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
【主な症状】体力があまりなく、疲れやすい体質で神経過敏、興奮しやすい、眠りが浅い
悪い夢をよくみる。不眠傾向、動悸、寝汗、眼精疲労を伴うこともあります。
【効果】「気」と「血」を補うことで体のバランスを整えながら、不安定な神経の高ぶりを落ちつかせることで症状を改善します。
【成分の効能】気血を補う桂枝湯(ケイシトウ)が基本骨格となっている処方で、竜骨・牡蛎でこころを安定させイライラなどの神経の高ぶりを鎮めます。小児の夜泣き・夜尿症、フケや脱毛などにも用いられ、老若男女を問わず幅広く使える漢方薬です。

やる気が起きず、不安・不眠と共に倦怠感や食欲不振がみられる「気虚」タイプ

このタイプの方は、精神不安や不眠、抑うつ感といった精神症状のほかに、全身の倦怠感、やる気が起こらない、食欲不振など消化不良などがみられます。元々体力がないという方、また、病後、強いストレスなども原因の1つと考えられます。

*補中益気湯(ホチュウエキキトウ)

補中益気湯

【主な症状】疲れやすく全身の倦怠感・食欲不振がある人の気持ちの落ち込みや気力低下
汗(特に寝汗)が多い、唾液が多い、風邪をひきやすい傾向。
【効果】生命活動のエネルギーである「気」の量が低下した「気虚」の状態に陥っているので、からだの中心である胃腸の働きをアップさせ、「気」を益して(増幅させて)、元気なからだに導きます。
【成分の効能】胃の働きを補いながら、主薬である黄耆(オウギ)が人参(ニンジン)と組むことで「気」を生み出し、さらに升麻(ショウマ)・柴胡が下に落ちた「気」を引き上げることで元気を補い症状を改善します。病後の体力増強、胃下垂、痔、子宮脱、夏バテなどにも用います。

*加味帰脾湯(カミキヒトウ)
【主な症状】体力が中等度以下で、心身が疲れやすい方の不安感、焦燥感、不眠
血色が悪く、イライラする、血色が悪く貧血傾向、のぼせを伴うこともあります。
【効果】消化器の働きを助けながら不足した「血」を補うことで気持ちを落ち着かせることで精神が安定します。
【成分の効能】
黄耆や人参などで胃を立て直しながら、竜眼肉(リュウガンニク)や酸棗仁(サンソウニン)、当帰(トウキ)で「こころ」を穏やかに保ち、更に柴胡と山梔子(サンシシ:クチナシの実)でのぼせ・ほてりを改善し、全体として気持ちを穏やかに改善することで自律神経の興奮を鎮め症状を改善します。

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この記事を書いた人

斉藤明美

斉藤明美薬剤師・医学博士

北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。

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