【インタビュー】宮坂力先生! 2025年にペロブスカイト太陽電池は実用化できますか?

ペロブスカイト太陽電池をめぐっては2023年10月岸田首相2025年の実用化を表明、経産省も650億円に予算を上積みし開発に本腰を入れている。一方、ペロブスカイト太陽電池をめぐっては中国も実用化に向けて開発に力を入れている。そんな現状についてペロブスカイト太陽電池の発明者で、ノーベル賞候補とされる宮坂力桐蔭横浜大特任教授に聞いた。

小川純2024/04/18

スタンドの光で発電してモータを回すこともできる

ペロブスカイト太陽電池は室内の光でも発電する


ペロブスカイト太陽電池のもう1つの特長として光が弱くなっても発電するということがあり、光が弱くなると急激に発電量が落ちるシリコンの太陽電地の対する強みにもなっている。


宮坂:ペロブスカイト太陽電地は暗くなっても光が当たっていれば常に発電します。一方、シリコンの太陽電地は光が10分の1になると発電量は20分の1、50分の1になってしまい発電をしなくなってしまいます。
発電力は、電流と電圧を掛けたワット数になりますが、シリコンの太陽電地は光が弱くなると電圧が一気に下がるため、光が弱くなると電圧が下がって発電をしなくなってしまいます。

また、シリコンの太陽電池は赤外線も吸収して発電するので、晴れた屋外ではいいのですが、屋内の照明では可視光線しかないので、発電の効率が大きく下がります。
その点、ペロブスカイト太陽電池は、光の量が10分の1になれば、発電量はそれなりに10分の1くらいに減りますが、効率は下がらず発電を続けます。

室内光の量は屋外の500~1000分の1になりますが、それでもペロブスカイトは発電する。LEDの光を当てると発電効率が34%まで上がりました。
おおむね1㎡で150Wの発電量があり、実用的には10~20㎡のものを設置することになるかと思います。強い光が必要なシリコンの太陽電地は発電効率のよい戸建ての屋根への設置が基本ですが、ペロブスカイト太陽電池であれば、ビルの壁面やマンションのベランダへの設置で十分発電します。


もう1つの課題とされているのが、素材として鉛が使用される点がある。


宮坂:ペロブスカイト太陽電池で指摘されている課題に、鉛の環境有害性があります。これは回収を確立させるインフラを整えるしかありません。
例えば、車のバッテリーは鉛を使っていますが。ディーラーなどで回収されています。これ同じように建築用などのものは回収システムを作ることで対応は可能でしょう。
ただ、ペロブスカイト太陽電池はフィルムにすることで、

その用途が広くなり鞄などの人が携帯するものにも取り付けることができます。ペロブスカイト太陽電池は、今、指摘されている耐久性、鉛以外悪い点がまったくないどころか、メリットしかありません。

対応策の1つとしては、代用品としてスズ(錫)を使うことが可能です。ただ、ペロブスカイト太陽電池で使用するスズは、空気に触れただけで酸化してしまうほど、活性度が高く不安定なものです。
そこでスズと鉛を50%ずつに混合させることで、安定させながら鉛の量を減らということも考えられますが、これについてはまだ研究が必要です。
こうした課題はありますが、僕は楽観的に考えています。
むしろ問題は、生産設備を整えて作ろうしている企業が、数社しかない点です。この状況では、どうしても開発速度が遅くなってしまいます。多くの企業が参入してくれれば必ず、問題はクリアすると思っています。
ペロブスカイト太陽電池では、塗布技術が重要なので印刷会社の参入がしやすいと思います。

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この記事を書いた人

小川純

小川純編集・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経て現職。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険、企業レポートなど幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動。実用書、個人の自分史などの書籍編集を行っている。

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