週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経て現職。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険、企業レポートなど幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動。実用書、個人の自分史などの書籍編集を行っている。
「太陽電地は儲からない」というトラウマ
今後はシリコンの太陽電地からペロブスカイト太陽電地へと入れ替わることになるのだろうか。
宮坂:最終的にはペロブスカイト太陽電地が、シリコンなどのほかの太陽電地に置き換わるだろうと思っています。
とはいえ、当面、シリコンは減らず、だんだんとシリコンが使えない場所にペロブスカイト太陽電池が入ってきて、本格的にシリコンに置き換わるのは、耐用年数が20年ぐらいになるなど、今、指摘されている課題が克服されてからになるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池は、今、指摘されている耐久性、鉛を使うこと以外は問題点がまったくないどころか、たくさんのメリット、いいこと尽くめと言えます。
しかも、工場生産の設備が非常に安く、生産コストを抑えることができる。
そのため中国はペロブスカイト太陽電池で、世界に先んじてシリコン太陽電池を置き換えようと本気で考えているのです。
具体的には、発電についても曇天でも発電ができ、フィルムを基板としたものであれば、軽くて設置や回収も容易です。しかも、工場生産の設備が非常安く、生産コストの抑えることができる。
そのため中国はロブスカイト太陽電池でも優位性を持つために、世界に先んじてシリコンから置き換えようと本気で考えているのです。
一方、日本の企業は動きが鈍い。シリコンの太陽電地で負けたことで「太陽電地は儲からない」というトラウマになってしまっています。
宮坂教授が考えるペロブスカイト太陽電池のある世界とはどういった世界か。
宮坂:僕が話しているのは、自立分散型のエネルギーで各世帯がそれぞれ発電して、売電ではなく蓄電池に充電して自分たちで使う――これを普及させたいと思っています。ペロブスカイト太陽電池と蓄電池のシステム、これを各世帯に、家電製品と同じぐらいの価格で普及させたいと思っています。
宮坂 力(みやさか・つとむ)
桐蔭横浜大学特任教授
東京大学先端科学技術研究センター・フェロー
1953年、神奈川県生まれ。1976年早稲田大学理工学部応用化学科卒業。81年東京大学大学院工学系研究科合成化学博士課程を修了(工学博士)、富士写真フイルム株式会社入社。足柄研究所主任研究員を経て、2001年より桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授。04年ペクセル・テクノロジーズ株式会社を設立。17年より現職。2009年にペロブスカイト太陽電池の論文を発表。このことからノーベル化学賞の有力候補といわれている。