「歴史と自然破壊」が進んだ? 小池百合子都知事の2期8年を検証

都知事3選楽勝ムードだった小池百合子都知事。しかし、年が明けると、推薦候補が次々と落選し、立憲民主の蓮舫参院議員の都知事選への出馬表明と逆風に見舞われている。3期目の出馬した小池知事の2期8年の都政運営を検証する。(※この記事は6月5日に公開した「小池百合子都知事の知事選不出馬? 3選出馬宣言ためらいの背景」を改題、一部内容を再編集したものです)

山下努2024/06/13

歴史と自然破壊が進む東京再開発の共通点

神宮外苑の銀杏並木

実際、小池都政の2期8年を振り返ると、次々と再開開発計画が進められてきた。
築地市場の豊洲移転の延期を旗印に都知事選の初出馬し、移転は延期したものの小池知事のもとで、中央区の築地市場は、既定路線通り江東区の豊洲市場に移転された。
その築地市場跡地の再開発計画には、当初、小池都知事がいっていた「食のテーマパーク」は影もかたちもなくなり、野球場にも使える大型アリーナや摩天楼ビル、さらには空飛ぶクルマの発着所がつくられる予定だ。

神宮外苑では、新宿区と港区にまたがる明治神宮も大型再開発が進む。歴史ある秩父宮ラグビー場と、もうすぐ100年を迎える神宮球場も壊されて、それぞれ場所を交換し、新築される。新しいラグビー場は人工芝の上に天井がつくが、観客席は半分以下に減らされる。ラグビー関係者の一部は、「人工芝の上で本気でラグビーをすれば熱でケガをするので、ラグビーごっこしかできないのではないか」と真剣に怒っている。

また、移転が決まった神宮球場にしても、耐震補強を済ませていたにもかかわらず、ホテルなどオシャレな施設を併設するため建替えられる。こうした一連の開発によって、樹木の伐採や強制的な移植が行われるというわけだ。

約150年の歴史を誇り、数々の歴史上のイベントの会場となってきた日比谷公園も改造が進み、すでに日比谷公園内の歴史ある建造物や備品は撤去され始めている。最終的には芝生広場など、どこにでもある公園となり、格好の商業イベント場になるだろう。

これら小池知事の都政下で進められている一連の大型再開発を見ていくと、特定の大手デベロッパーが中心的な役割を担い、本来であればこうした再開発を冷静に見つめ、その動向をチェックすべき立場にあるマスコミが参入しているため、目立った批判が起きていない。
具体的には、神宮外苑の再開発では、日本テレビなどの企業が事業に参加し、建て替え費を出す一方、ほぼ40年間も利用する。
築地再開発でも読売新聞グループが再開発事業者の1つとして名前を連ね、朝日新聞社も協力企業として加わっている。

また、小池都政の東京再開発では、歴史的な建造物の破壊と自然破壊という共通点もある。
150年の歴史を誇る日比谷公園、約100年の歴史を持つ神宮外苑は、イコモスが環境アセスメントからやり直しを求められた。

葛西臨海公園の石碑

さらに江戸川区の葛西臨海公園の再開発では、海岸沿いの森が伐採され、水族園が建て替えられる。
葛西臨海公園は、人工の海浜だが、ラムサール条約に加盟する貴重な干潟である。そこには「ラムサール条約湿地 葛西海浜公園 平成30年10月 東京都知事 小池百合子」と記された大きな石碑が建っていて、自筆なのだろうか小池百合子知事の名が刻まれている。

もちろん、再開発が好きな都民もいるが、一方で、歴史的なものはそのまま残し、公園は静かな場所がよいと思う都民もいる。
再開発が都知事選の大きなテーマにならないという見方もあり、選挙争点は子育て支援や高校の授業料の原則無償化など、小池知事が出馬すれば現職を強みに実績をアピールするだろう。これらの政策は多くの誰も反対する理由はなく、こぞって好意的である。

小池都政が継続し、東京再開発がさらに進めれるのか。東京の未来は7月7日に決められる。

1 2 3 4

この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています