「歴史と自然破壊」が進んだ? 小池百合子都知事の2期8年を検証

都知事3選楽勝ムードだった小池百合子都知事。しかし、年が明けると、推薦候補が次々と落選し、立憲民主の蓮舫参院議員の都知事選への出馬表明と逆風に見舞われている。3期目の出馬した小池知事の2期8年の都政運営を検証する。(※この記事は6月5日に公開した「小池百合子都知事の知事選不出馬? 3選出馬宣言ためらいの背景」を改題、一部内容を再編集したものです)

山下努2024/06/13

「緑のおばさん」から「緑のタヌキ」に

そんな東京でいま問題になっているのは、都有地や公有地を利用した再開発事業や過去に決まった都道(都市計画決定済みの道路)の建設や防災のための街づくりだ。

半世紀前ぐらいに都市計画決定され、計画当時と道路需要など実情が大きく違っていても、コツコツと用地買収を進めてきた経緯から、社会情勢が変化や住民の反発が大きくても建設が止められない事例もある。

その1つが商店街を突き抜ける道路(板橋区の大山地区)の反対運動で「反小池知事」の大きなうねりになってきている。大山対策なのか、都庁の建設局内に『機動取得推進課』が4月に新設。この部署を「道路用地等の地上げを専門部隊」と書いた媒体もあったほどだ。
 こうした各地の再開発事業と同時に東京都が許認可権を握る再開発事業には、摩天楼のような大きなビルが建つと緑や森林、芝生がどんどん少なくなり、地球温暖化とは逆行しているといわれ、灼熱地獄の東京に拍車をかけかねない巨大再開発が進む。

東京都環境局のホームページ

小池知事はこれまでも巨大デベロッパーの誘いで「打ち水をして涼しい東京にしましょう」というイベントに出てきていたが、さすがに最近はやらなくなった。また、ひと頃は、「緑のおばさん」といわれていたことをそう悪くは思わなかったらしい。
というのも、緑は地球を守る象徴であり、支援する都民ファーストのカラーでもある。しかし、大手デベロッパーと組んで再開発を推進するところから、地球を救うというスローガンに疑問が呈され、「緑のタヌキ」と陰口されるようになり、最近では緑の服をなかなか着なくなったという噂もある。

小池知事の最大の功績は、世界平和の象徴である東京オリンピックをコロナ禍のなか乗り切ったことだろう。1964年の東京オリンピックから、これに合わせて57年ぶりの東京大刷新も行われ、建設・不動産業界などは、東京五輪を理由とした東京の巨大再開発によって潤ったはずだ。

東京五輪はなんとか成功させたけれど……

とはいっても、そもそも小池都知事は、開発行政の隅々まで目を光らせているタイプではない。政策の方向を示し、あとは東京都の官僚のシナリオに乗るタイプ。そのため現在俎上に上がっている再開発や建設事業はまさにこうした特徴が表れている。したがって、東京都の土地整備局や建設局などの役人にとって、ここ数年の小池知事は非常に組みやすい上司のようだ。

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この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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