政治・経済、都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。
利上げは6月に決まり、住宅ローンに効くのは8月から
日本銀行は6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%程度に引き上げることを決めた。無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.75%から0.25%引き上げたもので、適用は翌17日から始まっている。
この会合は、植田和男総裁が欠席するなかで開かれた。しかも決定は全員一致ではなく、賛成7、反対1だった。反対した浅田統一郎審議委員は、中東情勢の影響について「物価の上振れリスクよりも生産・雇用の下振れリスクの方が大きい」として、据え置きが望ましいとしている。
政策金利の引き上げは、当然のことながら住宅ローンの金利にも影響する。
実際、三菱UFJ銀行は6月16日、短期プライムレートを2.125%から2.375%へ0.25%引き上げると発表した。改定日は8月3日である。理由は「日本銀行の金融政策決定会合の結果、ならびに市場金利上昇を受けて」と説明されている。同様にみずほ銀行、みずほ信託銀行も同じ日付でリリースを出しており、三井住友銀行も8月3日の改定となる。さすがメガバンク、重要なことは横並びだ。
それはともかく、短期プライムレートとは、銀行が信用力の高い企業に短期で貸し出すときの最優遇金利のこと。変動型の住宅ローンは、多くの金融機関がこれを基準にしている。つまり8月3日は、変動金利で借りている人にとって、金利が動く日ということになる。
地域金融機関も追随している。たとえば、たちばな信用金庫は7月7日、短期プライムレートを2.625%から2.875%へ引き上げると告知。改定日はメガバンクと同じ8月3日、引き上げ幅も同じ0.25%だ。水準はメガより0.5%高い。
金融機関は、令和の今でも横並び主義である。
3500万円・35年なら、月3877円
では、実際に返済金額はどのように変わるのか。借入3500万円、返済期間35年、元利均等返済で試算したのが以下の表だ。
| 適用金利 | 毎月返済 | 年間 | 総返済額 |
|---|---|---|---|
| 0.40% | 8万9317円 | 107万円 | 3751万円 |
| 0.65% | 9万3194円 | 112万円 | 3914万円 |
| 0.90% | 9万7177円 | 117万円 | 4081万円 |
| 1.15% | 10万1266円 | 122万円 | 4253万円 |
0.40%から0.65%へ、つまり0.25%上がると、毎月の返済は3877円増える。年間で4万6530円、35年の総返済額では約163万円の差になる。
借入額別に見るとこうなる。いずれも残り35年、0.25%上昇の場合だ。
3000万円 … 月 +3324円(年 +3万9883円)
3500万円 … 月 +3877円(年 +4万6530円)
4000万円 … 月 +4431円(年 +5万3177円)
5000万円 … 月 +5539円(年 +6万6471円)
月3877円という金額をどう受け止めるかは人によるだろうが、この金額は1回分の利上げによる差だ。日銀は決定文で「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と明記していることから、この先も金利は上がるということである。
「5年間は返済額が変わらない」の落とし穴
ただ、変動金利には5年ルールがある。これは金利が上がっても、毎月の返済額は5年間据え置かれるという仕組みだが、安心してはいけない。
据え置かれるのは返済額であって、金利ではないという落とし穴があるからだ。
借入3500万円・当初0.40%の例で見てみると、毎月の返済額は8万9317円だが、このうち利息が1万1667円、残りの7万7650円が元金の返済になる。

要は金利が0.65%に上がると、利息は1万8958円に増えるということ。
返済額は8万9317円のまま変わらないが、元金に回る分が7万359円に減ることになる。つまり、これまでより元金の返済が7291円少なくなるということだ。
これを5年で計算すると43万7460円になり、当然のことながらこの43万7460円にも利息がかかる。
仮に金利が0.90%まで上がると、元金に回る分は6万3067円で当初より月1万4583円、5年で87万4980円の元金が減らないということになるのだ。
返済額が変わらないので、家計は痛まない。痛まないけれど、借金も減らないというわけ。
そして、5年後の見直しで、返済額は上がる。上限は従前の125%と決まっているので、8万9317円なら最大11万1646円まで上がりうる。5年間で貯まったツケを、6年目からの返済額が引き受ける形になるのである。
返済予定表の確認と繰り上げ返済
対応方法は自分のローンの見直し時期を確認することからはじまる。
多くの金融機関は年2回、4月と10月に金利を見直し、返済額の変更は5年ごとに行っている。8月3日に短プラが上がっても、適用がいつになるかは契約によって違うが、重要なことは返済予定表を確認することだ。
次に行うことは、いまの返済額に月5000円上乗せしてもやっていけるかを考えておくこと。上の試算のとおり、1回の利上げで数千円動く。2回、3回と続けば1万円を超えてくる。家計に余力があるかどうかを、金利が上がってから考えるより、事前に行うことで、対策の選択肢が増える。
その対策の1つが繰り上げ返済だ。繰り上げ返済は、金利が上がる局面ほど効果がある。元金を減らせば、そこに乗る利息も減るからだ。手元資金とのバランスにはなるが、検討する価値はある。
借り換えについては、いま急ぐ理由は乏しい。前回の記事(住宅ローン、変動がお得なのは政策金利2%まで? 金利上昇の備え方)で試算したとおり、固定が変動を逆転するには政策金利が2.25%を超える必要があった。現状は1.0%で、まだ幅がある。
ただ、その幅も5月時点より確実に縮んでいる。5月の記事では0.75%だったが、2か月半で0.25%動いたということを覚えておきたい。
守りの繰り上げ返済、攻めの売却
ここで注目したいのが、日銀が出した決定文の別紙で、住宅投資について「減少傾向にある」と書いているということだ。これは金利が上がる局面で、住宅を買う動きは鈍るということで、これは借りる側だけでなく、売る側にも影響するということ。
実は政府が行う経済対策として、もっとも効果あるのが住宅政策だ。言い換えれば、住宅が売れなければ景気が落ち込む。そこで何らかの住宅政策が打ち出されることが予想される。
考えられるのは、住宅買い換えの際の優遇税制の導入や住宅ローン減税だ。現状は、中古住宅の価格は上昇傾向にあり、選択肢の1つに売却もいれておいてもよいだろう。
繰り上げ返済が「守りの対策」とすれば、売却は「攻めの対策」といえる。攻守を合わせた対応を考えてみてはどうだろうか。
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