リスクを知っていても、「対処できていない」が実態
総務省の2023年住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新した。約7軒に1軒が空き家という計算だ。野村総合研究所の推計では、2033年には空き家率が30%を超え、3軒に1軒が空き家になるとも予測されている。
背景にあるのは高齢化と相続の問題だ。親が亡くなり実家を相続したが、すでに自分の家があるため使い道がない。遠方に住んでいて管理できない。売るにも借り手がつかないなど「宙に浮いた空き家」が、全国各地で増えている。
NEXER(本社・東京都豊島区)が空き家所有者を対象に実施した調査(2025年)によれば、空き家が引き起こすリスクを「知っている」と答えた所有者は75.7%に上った。数字だけ見ると「多くの人が把握している」ともとれるが、話はそう単純ではない。知っていても動けない、あるいは動いていない所有者が大半なのだ。
同調査で「空き家の問題に対してどう対処しているか」を聞くと、「特に対策を取っていない」が最多を占めた。その理由のトップは「どうすればよいかわからない」が37.2%、次いで「費用がかかる」が29.3%、「手続きが面倒」が27.3%だった。「知識はあっても動いていない」という現実なのだ。
「特定空き家」に指定されると、固定資産税が最大6倍になる
中でも見過ごせないのが、税負担の問題だ。
現行の税制では、住宅が建っている土地には固定資産税の特例が適用され、更地の場合と比べて最大6分の1に軽減される仕組みがある。しかし「特定空き家」に指定されると、この軽減措置が外れる。つまり、翌年から固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性がある。
特定空き家とは、倒壊の恐れがある、衛生上有害な状態にある、景観を著しく損なっているなど、行政が「そのまま放置することが不適切」と判断した空き家のこと。
2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法では行政の権限がさらに強化され、指定されると修繕や撤去の勧告・命令が下され、従わない場合は行政代執行で解体され、その費用は所有者に請求されるというもの。
調査では、「特定空き家に指定されると増税になることを知っているか」という質問に対し、「知らなかった」と答えた人が約4割にのぼる。リスクの「存在は知っている」でも、「具体的にどうなるか」まで把握している人は少数派なのだ。
「放置」が招く近隣トラブルの実態
税金の問題だけではない。空き家を放置することで発生する近隣トラブルも深刻だ。
調査によれば、空き家が原因で「近隣から苦情を受けたことがある」と答えた所有者は31.0%にのぼった。具体的には、雑草・樹木の繁茂(46.9%)、不法投棄(39.0%)、建物の老朽化による景観悪化(44.6%)などが上位を占める。
こうしたトラブルは、放置が長引くほど解決が難しくなる。荒れた外観は周辺の不動産価値にも影響し、最終的には「近所迷惑な物件」として地域全体の評判を傷つける。空き家問題は、自分だけの問題ではないのだ。
では、空き家を持つ所有者はどこから手をつければよいのか。同調査で「解決策として有効だと思うこと」を聞いたところ、「売却」(46.7%)が最多で、「賃貸活用」(39.0%)、「リフォームして利用」(29.4%)が続く。一方、「解体・更地化」は20%台にとどまり、建物を残したまま活用したいという意向が強い。
ただ、「有効だと思う」と「実際にできる」の間には大きな壁がある。
やるべきは、物件の現状把握だ。自治体の空き家相談窓口や不動産会社への査定依頼から始めるだけでも、選択肢は格段に広がる。相談は多くの場合、無料で受け付けている。
そして、最も危ないのが「知っているが動いていない」状態だ。
なぜなら、特定空き家の指定は、気づかないうちに進むことがあるだ。固定資産税通知書が届いた時点で、すでに手遅れになっていたというケースも現実には起きている。
空き家は時間が経つほど選択肢が減り、コストが増える。早めに動くことが、最良の対策なのである。











