原則、定期借家契約は途中解約はできない
中でも、借り手にとって大きいデメリットの1つは、途中解約が難しいことだろう。
例えば、住宅を定期借家契約で戸建てを借りて居住していたが、お買い得なマンションが見つかり購入することになったため、家主に対して途中解約を申し込んだ。
しかし、家主は「定期借家契約である以上、途中解約はできない。解約するのであれば、契約期間満了までの家賃を支払ってほしい」と主張されるといったケースだ。
この家主の対応は一見すると家主が一方的に映るが、法的には必ずしも不当とはいえない。
借地借家法第38条第5項は、一定の条件下では、居住用の定期借家契約であっても借主からの解約を認めている。
具体的には、床面積200㎡未満の住宅について、「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情」により、借主が生活の本拠として使用することが困難になった場合には、解約の申し入れから1か月の経過をもって契約が終了すると定めている。
定期借家契約の途中解約は“例外的”
ここでポイントになるのが、「その他のやむを得ない事情」の解釈だ。
これについては、条文に列挙されている転勤や療養、親族の介護はいずれも、借主自身の意思や都合で自由に選択できるものではないという共通点を持つ。借主が自らの意思とは関係なく住み続けることが不可能となる場合である。こうしたケースで解約を認めないとなると、借主が著しく不利な立場に追い込まれてしまうため、法律では例外的に解約を認めている。
これに対して「自宅の新築や購入」は借主自身の判断と計画によるもののため、やむを得ない事情には該当しないと解されてしまう。その結果、このようなケースでは、法定解約権は認められず、定期借家契約を一方的に終了させることはできないという結論になる。

こうしたケースの場合、現実的な対応としては家主と交渉し、一定の違約金や解約金を支払うことを条件に、合意解約を認めてもらう方法を探ることになる。また、建物の床面積が200㎡以上である場合には、仮に「真にやむを得ない事情」が存在しても、法律上は解約が認められない点にも注意が必要だ。
定期借家契約は、契約時点でその拘束力を十分に理解したうえで契約する必要がある。










