旧築地市場開発は「三井不動産で決まり」というこれだけの理由

旧築地市場開発の提案応募が8月31日に締め切られた。これまでも「食にかかわる『食の文化センター』なもの」など話は出ていたが具体的には白紙だ。とはいえ、すでに中心は「三井不動産で決まり」と見られている。その理由と、プランを探る。

内外不動産価値研究会2023/09/08

「複数応募」というわりには情報開示は一部だけ?

しかも、22年11月以降は、都に事業予定者として立候補すると表明した業者にしか、重要情報を開示しておらず、おのずと応募企業が絞られた形の密室再開発事業提案になっている。

そうした内部情報が不動産・建設業界を駆け巡り、「落札は三井さんがスポンサー(事業代表者)になるのが有力」、「残りの数社(ゼネコン、不動産、設計など)、そして24年以降に名が出るはずのマスコミを含む数社もわかっている」という声も聞こえてくる。

再開発に参加したい各社はそれぞれ企業チームを組んで、提案の入札に臨むわけだが、「複数応募」とはいえ、「少数精鋭」の提案が行われようだ。築地開発SPCは最大限2つ程度と思われ、そのうち1社は当て馬だ。晴海選手村再開発と同様に、業界の意向や行政の意を汲み、大手企業全参加のオールジャパン連合の開発にもなりうる可能性がある。

コンセプト重視という「ワンパターン」な都市開発

高層ビルが建てば海風が流れ込みづらくなる

再開発される面積は、20ヘクタール前後で、都の借地のまま、70年程度の超長期の長期定期借地権を使って開発される見込みだ。

これは築地市場と隣の隣の港区の竹芝地区の広大な都有地で行われた「ステップアップ都市開発方式」と同様、借地料の額よりも「どういう街づくりになるか」というコンセプト重視で採択されることをうかがわせる。

とはいえ、オフィスやマンションなら大手デベロッパーの開発力・提案力は伯仲しているものの、商用施設やスポーツ施設、医療や研究開発施設も含めた施設となると、一番手はこれまでも東京オリンピックなどの開発計画に携わってきた三井不動産に一日の長があるのは、業界関係者なら誰の目にも明らか。

都は、ホテルには国際会議場などMICE(企業などの会議場、研修旅行、国際機関などが行う国際会議展示会・見本市などのイベント会場を備えた施設)を盛り込むよう開発の在り方を議論した「築地地区まちづくり検討委員会」などで呼び掛けおり、こうした機能が入ることが予想される。

旧築地市場と港区の竹芝地区を含めた再開発進めば、海影を遮断され、建ち並ぶ高層ビルの摩天が海風を止めてしまい、夏の銀座周辺はさらに暑くなってしまうことが懸念される。

この再開発をどこの企業群が選定されるかは、専門家などの審査を経て24年3月ごろ発表される予定だ。

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都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。

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