環七より外側 マンションブームの終焉「不動産2030年問題」

タワーマンションをはじめとしたマンションの需要は堅調に推移している。しかし、それは都心に限ってのこと。実は郊外型のマンションの年間の販売戸数は急激に減少している。その背景になるのが「不動産の2030年問題」を考察する。

立川昭吾2024/12/27

2030年問題で始まる不動産市場の地殻変動

「不動産の2030年問題」とは、一言でいってしまうと人口減少と高齢化による不動産市場の構造的な変化です。つまり、これによって生じる問題の中心は、団塊の世代の不動産を中心とした相続にともなった不動産の供給過多と土地あまりなのです。
そして、相続によって市場に供給される住宅(土地)は、買い手が見つからないまま放置され、それが空家になるわけです。
一方、相続をする子どもは、相続で不動産を受け取るより現金を望む子どもが多くなっており、とくに女の子はその傾向が強い。これによって、地方や郊外の不動産価格を低下させる可能性があります。

こうした問題がより深刻なのは地方です。
たとえば、和歌山県のある地方都市では、数世代にわたって続く資産家の家族が、後継者問題と、それに関係した相続問題に直面しています。この一家は広大な土地を保有し、地域経済を支える存在でもありましたが、跡継ぎとなるべき娘が誰も跡を継ぐ気もなく、不動産の相続を望んでおらず、どうしたらよいか、相談を受けています。
こうした例は、地方では多くあります。

また、都市部の高級マンション市場でも将来的な課題が指摘されています。
現在は投資目的で購入されている物件が多いものの、2030年以降には、団塊ジュニア世代が60歳台に突入、都心のマンションが大量に市場に放出される可能性もあります。これによって、マンション価格の下落を引き起こすリスクもあります。不動産市場全体にわたる構造的な課題として、2030年問題は注視が必要です。

未来を見据えた投資戦略

不動産市場の変化を前に、不動産を購入する場合は中長期的な視点が必要です。
それは投資目的なのか、自分が住むことが目的かをきちんと見極めることが重要です。
今後も都市部のマンションは、引き続き高い需要が見込まれますが、エリアや物件選定を慎重に行う必要があります。加えて、不動産を購入・運用する際には、税金や維持費、地域ごとのリスクを十分に考慮し、持続可能な計画を立てることが必要です。

日本の不動産市場は2030年問題を契機に大きな変化を迎えようとしています。転換期を乗り越えるためにも、市場動向を把握し、冷静な判断がいま以上に必要です。

【回避不可】かなり危険!迫る「不動産2030年問題」より

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この記事を書いた人

立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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