環七より外側 マンションブームの終焉「不動産2030年問題」

タワーマンションをはじめとしたマンションの需要は堅調に推移している。しかし、それは都心に限ってのこと。実は郊外型のマンションの年間の販売戸数は急激に減少している。その背景になるのが「不動産の2030年問題」を考察する。

立川昭吾2024/12/27

東京は環七から外のマンション建設が激減

こうした状況になって、新たな問題も生じています。
それはかつてマンション建設が盛んだった日本全国で、都心部から離れた郊外型マンション市場が厳しい状況になっているということです。

2005年から2006年には、全国で年間8万~9万戸のマンションが販売されていました。しかし、2023年には、その数が6万戸にまで減少しています。この減少傾向は、マンション需要が都心部に集中し、郊外型の物件が需要を失いつつある現状を物語っています。

マンション開発がおさまりつつある環状7号線

特に、東京都心から離れた環状7号線(環七)や環状8号線(環八)沿いのエリアでは、マンションの販売不振が顕著です。これらのエリアでは以前、マンション用地が積極的に開発され、多くの新築マンションが建設されました。しかし、最近では未活用の空き地や駐車場として放置されるケースが目立っています。不動産業者の間では、「都心から離れたエリアの物件は売却が難しくなっている」という声が広がっています。

郊外型マンションの需要低下の要因の1つは、もちろん人口減少です。
団塊の世代を中心に郊外の住宅需要が高まったものの、少子化と若年層の都市部へ流出が加速し、郊外地域では空家や売却困難な物件が増加しています。

環七、環八の外側、国道16号沿線はさらこの傾向が顕著です。かつて国道16号線沿いは千葉県の千葉市、柏市、埼玉県の春日部市、川越氏、都下の八王子、神奈川県の相模原市、横浜市、横須賀市といったエリアで、大規模な住宅開発が進みましたが、現在ではその多くが「住む人のいない街」と化しています。

46年の歴史に幕をおろしたイトーヨーカドー津田沼店

また、これらの地域では住宅地が広がりと並行して大型ショッピングモールの開発も進み、イトーヨーカドーやイオンモールといった大手スーパーマーケットが次々と進出、地域経済を支えてきました。しかし、近年ではこれらのショッピングモールが閉鎖されたり、他社によって買収されたりするケースが増加しています。
たとえば、イトーヨーカドーの船橋店やイオンモールの一部店舗は2020年以降に閉店したことで周辺の住宅需要もさらに低下しました。
これは大阪、名古屋、福岡などの全国の主要都市でも同様なことが起きており、このことがさらに進んで郊外の空家、地方の空家問題となってきました。

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立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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