環七より外側 マンションブームの終焉「不動産2030年問題」

タワーマンションをはじめとしたマンションの需要は堅調に推移している。しかし、それは都心に限ってのこと。実は郊外型のマンションの年間の販売戸数は急激に減少している。その背景になるのが「不動産の2030年問題」を考察する。

立川昭吾2024/12/27

名古屋、大阪のニュータウンはオールドタウン

空家問題は、地方だけでなく、最近では東京でも深刻化しています。
なかでもとくに注目されるのは世田谷区です。世田谷というと高級住宅地として知られていますが、空家の増加が進んでいます。東京でいうと、この世田谷区や大田区、北区、足立区などでも空き家が急増していると指摘されており、郊外型の住宅地が「終焉の時代」を迎えつつあります。

こうした現象は全国的に出てきており、関東では多摩ニュータウン、名古屋の高蔵寺ニュータウン、大阪の千里ニュータウンといった3大ニュータウンが、いまやオールドタウンとなってしまっています。

高蔵寺ニュータウン

まさに湖の水がだんだん少なくなって、水が中心部にだけに残り、周辺は干上がってくる、そんな状況が日本の大都市で起こっているのです。つまり、人が集中するのは大都市圏の中心部だけで、周辺には住む人がいなくなる――この境が2030年、即ちこれが「不動産の2030年問題」なのです。

この現象の背景にあるのは、戦後のベビーブーム時代に作られた住宅地の需要が減少していることがあります。そして、これが相続問題と絡んできています。
それは子ども世代が郊外の実家を「住みたくない場所」と感じて売却を希望する一方で、買い手が見つからないことが課題になっています。言い換えれば、郊外の住宅は人口減少や少子化の影響で、相続後の利用価値が低くなり、不動産はいらないということなのです。

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立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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