「10棟以上のタワマン建設」北品川再開発の中身と計画反対に動き出す住民たち

まだ昔ながらの風情が残る北品川駅周辺で13ヘクタールに及ぶ再開発計画が進もうとしている。これに対して10に及ぶ住民団体が立ち上がり――果たしてこの巨大な再開発計画ゆくえは…

山下努2024/10/22

本当に進むのか? 危惧される建設費の高騰

品川区の再開発はタワマン建設が中心で、品川浦では11棟のタワマン建設が構想されている。品川区の再開発でよく名前が出る不動産会社は、三菱地所グループや三井不動産グループのほか、港区を根城にする日鉄興和不動産だ。なかでも日鉄興和は日鉄系の不動産が旧日本興業銀行系のデベロッパーの興和不動産と合併した会社で、旧興和不動産はバブル経済時代に森ビルと港区の再開発を競い、バブル崩壊後は、経営が厳しい局面もあった。
しかし、いまの日鐵興和は品川駅(港区)の品川インターシティの巨大再開発以降、品川浦の開発を主導する1社となっている。同社は日鉄不動産の八幡製鐵所跡地の再開発も手掛け、品川インターシティでは、旧国鉄の操車場、品川駅北の開発も同じく操車場跡地の開発を行った。
さらに三菱地所レジデンスと日鉄興和は長さ東洋一といわれた武蔵小山の商店街を寸断するタワーマンションを計画している。

これから再開発を立ち上げる場合、地価の下落(東京都心の超一等地を除く)と、人件費、資材費など、建築費の高騰は避けられないと見られている。
建物物価調査会が発表した9月の東京地区の建築費指数によると、マンションの建築費が過去最高を更新した。型枠工や左官といった専門職人の人件費が上がり、鉄筋や鉄骨などマンション建設のコスト上昇に歯止めがかかっていない。
中野区の中野駅前にあるサンプラザ中野を含む再開発計画もさまざまな経費の高騰で採算が合わなくなり、計画が見直されることになった。品川浦周辺は似たようなオフィスビルやタワマンがすでに乱立している。いまから巨大事業を始める品川浦のマンション連続開発も、他地域の厳しさを追体験することにはなるまいか。

事業自体が見直される可能性も出てきた「中野サンプラザ」の跡地の再開発計画

マンションの指数(速報値、2015年=100)は9月に133.9と、前月から1.2%上昇した。最近では、ほぼ毎月のように過去最高を更新する上昇基調にある。1年前に比べると6%高くなっている。
これは前述した型枠工事になどの人件費と材料費の指数が前月比で上がり、コスト高に拍車をかけているため。マンション以外の建物種別の指数も9月には過去最高となった。
具体的にはオフィスビル(鉄骨造)は前月比0.7%高の134.6、工場(同)は0.7%高い134.1、住宅(木造)は0.8%高の139.5になった。

品川区がかかわって進めている再開発は武蔵小山、大崎西口、東五反田、品川浦、大井町、戸越の6エリアとされるが、細かく見ていくと数十エリアになりそうで、品川区は東京都最大の再開発区といえる。

1 2 3 4 5

この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています