「10棟以上のタワマン建設」北品川再開発の中身と計画反対に動き出す住民たち

まだ昔ながらの風情が残る北品川駅周辺で13ヘクタールに及ぶ再開発計画が進もうとしている。これに対して10に及ぶ住民団体が立ち上がり――果たしてこの巨大な再開発計画ゆくえは…

山下努2024/10/22

次々と立ち上がる住民団体

「品川浦周辺地区 再開発を再考し立ち退きから住民を守る会」が発行する冊子の創刊号によると、「品川区は市街地再開発への累計税金投入額から見る23区でも中央区に次いで2位にあたる再開発が突出して多い区だ」と前述の地元区議は指摘する。
この8月には、再開発に巻き込まれる住民らと、品川区との話し合いがあったが進展はなく、住民からは次のような不満ばかりが爆発した。

「住民発意って何ですかね? そもそも再開発に何の知識も持たない普通の住民はこんな大規模な再開発って発想もない」
「近所で再開発したいねという話は一切聞いたことがない」
「住民に相談されることもなく、先に企業やら行政と話が進んで、事後報告的に、再開発の話が降ってわいてきました」
「勝手に、再開発地域に含められ、巻き込まれました」

などと住民は困惑した声を区にぶつけた。区の姿勢にも次のような批判が集まった。

「反対の人の意見を聞くような雰囲気が元々ないのは一目瞭然」
「早く進めろという意見は(準備組合のニュースなどでよく目にしますが)住民が到底受け入れられない内容のまま、早急に都市計画決定に持ち込むようなことには反対です」

さらに再開発の構想図では「イメージパース」「ゾーニング」など横文字が並ぶ。しかも品川浦方面を望む水辺を中心とするゾーニング、パブリックスペースの事例イメージには「本資料は現時点での検討中のイメージを示したもので確定したものではありません」と書かれ、美しい港に変貌するスケッチは絵に描いた餅のようで、それを見ただけでは再開発によってできあがる真の姿がわからない。
住民にとっては、これまで再開発計画を事前に察知することが少なく、後手に回ってきたが、ここにきて巻き返しを図っている。

実際に「住み続けられるまちづくりをめざす品川区民の会」の構成団体も増え、10団体を突破することが見えてきている。

9月23日には東五反田一丁目地区の「東五反田一丁目地区市街地再開発を心配する会」が正式発足した。
これまでに活動を始めたのは、「大崎西口駅前地区再開発を心配する会」「大崎西口高層建築を考える会」「武蔵小山の再開発から住民と職場を守る会」「五丁目の環境と文化を守る会」「東大井五丁目1~4番地区 再開発を心配する会」「戸越公園駅周辺 調和のとれた街並みを創生する会」「住民の暮らしと安全・環境を守る会」「放射2号線を考える会」「品川浦周辺地区再開発を再考し立ち退きから住民を守る会」である。

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山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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