マクロ経済の潮流から日々の暮らしに寄り添うお金の話まで――複眼的な視点で「生活」と「ファイナンス」を読み解く実践的チーム。メンバーは、生活者のリアルを綴るライター、現場感覚を持つファイナンシャルプランナー、そして個人に最も近い立場でライフリスクと向き合う生命保険・損害保険の営業パーソン。異なる立場と経験から、単なる数字や制度にとどまらない“生きた情報”を発信している。
この記事でわかること
0歳から使えるこどもNISAの枠と上限
ジュニアNISAとの違いと、12歳から引き出せる仕組み
月1万円・月5万円で積み立てた場合の試算
親が入れるお金は贈与になる 名義預金の注意点
口座を開く金融機関の選び方
親の新NISAとどう使い分けるか
子ども名義のNISAが2027年から
NISAに子ども向けの枠ができる。令和8年度税制改正で、0歳から17歳までの未成年が使えるつみたて投資枠が設けられ、2027年から始まる。
中身は大人のNISAを小さくした形だ。投資できるのはつみたて投資枠の対象となる投資信託に限られ、年間の投資額は60万円まで。非課税で持てる上限は600万円だ。毎月5万円を積み立てれば、10年で上限に届く。
18歳になると、大人のNISAに移る。子どものうちに積み立てた分は、そのまま非課税で持ち続けられる。
ジュニアNISAはなぜ使われなかったのか
子ども向けの非課税制度は、これが初めてではない。2016年から2023年まで、ジュニアNISAがあった。年80万円まで投資でき、株式も買えたが、利用は伸びないまま新規の受け付けを終えた。
最大の理由は、引き出しの制限だった。ジュニアNISAは原則として18歳になるまで払い出せず、途中で引き出すと、それまでの運用益に税金がかかった。高校や大学の入学金に使いたくても、3月31日時点で18歳になる年の1月まで待たなければならない。教育費のために積み立てるのに、教育費が必要な時期に使えないという矛盾を抱えていたのだ。
こどもNISAは、この点を改めた。12歳以降は、子どものために使うお金であれば、子ども本人の同意を得たうえで親が引き出せる。払い出すときは、子が同意したことを示す書面をつけて、口座を管理する親が金融機関に申し出る。中学や高校の入学、大学受験といった節目に、非課税のまま取り崩すことができる。
2つの制度を並べると、違いがよくわかる。
| ジュニアNISA | こどもNISA | |
|---|---|---|
| 期間 | 2016〜2023年 | 2027年から |
| 年間の投資額 | 80万円 | 60万円 |
| 非課税の上限 | 年80万円×5年 | 600万円 |
| 投資できるもの | 株式・投資信託など | つみたて投資枠の投資信託 |
| 引き出し | 原則18歳まで不可 | 12歳以降、子の同意があれば可 |
| 18歳以降 | 課税口座へ移る | 大人のNISAへ自動で移る |
年間の投資額は小さくなり、投資できる商品も絞られた。代わりに、使いたい時期に使えるようにした。子どもの資産づくりを、株式の売買の場ではなく、教育費を積み立てる器として作り直したといえるだろう。
児童手当をそのまま回すといくらになるか
具体的にどれくらい増えるのか、試算してみた。
2024年10月に拡充された児童手当は、第1子と第2子なら、3歳未満が月1万5000円、3歳から高校生年代までが月1万円だ。0歳から18歳までに受け取る総額は、1人あたり約234万円になる。
仮に月1万円を0歳から18歳まで積み立てると、元本は216万円。年3%で運用できれば、18歳の時点で約286万円になる計算だ。元本に対して約70万円が運用益で、通常の口座なら約14万円の税金がかかるが、こどもNISAならこれが非課税になる。
月5万円を0歳から10年間積み立てると、元本600万円が年3%で約699万円になる。上限の600万円は元本で数えるので、このあと積み立てはできなくても、18歳まで非課税で運用を続けられる。
もちろん、投資信託は元本が保証されているわけではない。高校や大学の入学金のように使う時期と金額が決まっているお金は、その数年前から値動きの小さいものに移していくことも考えておきたい。
その受け皿も広がる。令和8年度税制改正で、つみたて投資枠の対象に、債券を中心に運用する投資信託やバランス型の投資信託が加わることになった。これまでの対象は主に株式で運用するものに限られていたが、使う時期が近づいたら債券中心の投資信託に切り替えるといった使い方が、こどもNISAの中でもできるようになる。
親のお金で積み立てるときの注意
子ども名義の口座に親がお金を入れると、税金のうえでは親から子への贈与になる。年60万円の積み立てなら贈与税の基礎控除110万円の範囲に収まるが、祖父母からの贈与も同じ年にあれば合算して考える必要がある。
もう1つ気をつけたいのが名義預金だ。子どもの名義でも、親が通帳や暗証番号を管理し、子ども本人が存在を知らないままだと、実質的には親の財産とみなされることがある。親が亡くなったとき、子ども名義の口座が親の相続財産として扱われるおそれがあるのだ。
贈与のたびに記録を残しておくこと、子どもがある程度の年齢になったら口座の存在を伝えることが、こうした指摘を受けないための基本になる。
口座は親が管理する
こどもNISAの口座は子ども名義だが、運用を指図し、払い出しを申し出るのは親権者などの口座管理者だ。0歳の子が自分で投資信託を選ぶことはできないので、実際には親が金融機関を選び、毎月の積立額と投資信託を決めることになる。
選ぶときに見ておきたいのは、親自身のNISA口座と同じ金融機関で開けるかどうかだ。同じ金融機関なら、家族の資産を一覧で確かめやすい。子が18歳になって大人のNISAに移るときも、手続きがわかりやすくなる。未成年のうちは口座を開いた金融機関をあとから変えられないので、制度の開始に合わせて、各社がどんな投資信託をそろえるかを比べてから決めたい。
新NISAと並べてどう使うか
親自身の新NISAの枠が余っているなら、まず親の口座で積み立てるという考え方もある。親の口座なら、教育費以外の目的にも自由に使えるからだ。
とはいえ、こどもNISAには親の枠とは別に600万円の非課税枠が加わるという利点がある。親の枠を老後資金で使い切りそうな家庭なら、子どもの教育費を子どもの枠で切り分けて運用できる。
ジュニアNISAが使われなかった反省は、制度の側で生かされた。あとは、家庭の中で「誰のお金を、いつ使うために積み立てるのか」を決められるかどうかだ。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品を推奨するものではありません。試算は一定の利回りを仮定した概算で、将来の運用成果を示すものではありません。
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