週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経て現職。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険、企業レポートなど幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動。ビジネス書、経済書などの書籍編集を行っている。
意外と貯まるiDeCoとつみたてNISA
iDeCoとつみたてNISAについては、「手数料が高い」「投資商品なのでリスクがある(iDeCoには元本保証の商品もある)」など、否定的な評価もある。
こうした批判を意識してか、金融庁は2016年に当時の長官自らが「手数料獲得が優先され、顧客の利益が軽視されている」と証券会社を批判。以降、iDeCoやつみたてNISAでは購入手数料を取らず、比較的安全とされるETFやインデックスファンドが中心にラインナップされるようになった。
では、実際にこの2つを活用すると、どのくらいの資産をつくれるのだろうか。
たとえば、いま40歳の人が、iDeCoで月々2万円、つみたてNISAで月々3万円を20年間、インデックスファンドで積み立てた場合を考えてみよう。
インデックスファンドの平均利回りが4~6%とされるなか、年利5%で計算すると、20年後の受取金額は元金1200万円、運用益837万円で、合計2037万円になる。つまり、いわゆる「2000万円問題」をクリアできる水準に到達する。利回り5%はやや楽観的かもしれないが、やり方次第で目標達成が現実的になるのは確かである。
ポイントは所得税控除の活かし方
さらに、iDeCo活用による節税効果も見逃せない。企業年金がない会社に勤める人のiDeCoの年間拠出上限は、現在27万6000円となっている。そこで40歳、年収600万円、東京23区在住、配偶者控除ありの人が20年間この金額を積み立てた場合と、利用していない場合とで、税負担にどのような差は次のようになる。
iDeCoを活用しない場合の年間所得税と住民税の合計は約40万2500円。これに対し、掛け金を全額所得控除として適用した場合の税額は約34万7300円となり、年間で約5万5200円の節税効果が生まれる。この節税を20年間継続すれば、単純計算で約110万4000円の負担軽減につながる。
この計算だと、たとえ運用利回りがゼロだったとしても、積立金額だけで552万円、これに節税分を合わせると合計662万4000円になるわけだ。
仮に、受取時に積み立てていた金融商品の評価額が2割下落したとしても、元本割れは110万円あまり。元本割れしてまうのはがっかりだが、この損失は節税効果でほぼ相殺できる計算になる。
言い換えれば、毎月の節税分である約4500円を別途貯金しておけば、投資商品の評価が2割下落するリスクに十分備えることができるというわけだ。
2026年のルール変更でさらに所得税が控除
2026年1月からiDeCoのルールが大幅に変更され、会社に勤めている方は、掛け金が6万2000円まで引き上げられる。そうなればここでお話ししたようにiDeCoとNISAの併用ではなく、iDeCoだけで毎月5万円を積み立てられ、その分をすべて税額控除できる。
ただ、今回のiDeCoのルール変更によって退職所得控除がなくなるといわれている。しかし、これは退職控除の二重取りがしにくくなったということで、誰も彼にも影響があるというわけではなさそうだ。むしろ満額で積み立てると、年間74万4000円の所得控除が受けられるようになるメリットのほうが大きいように感じる。なんなら、その節税分をつみたてNISAで活用するという方法もある。
お金が貯めるよい方法は、いかに税金を払わないようにするか節税が効果的だ。せっかく税金をとらないよ、と政府がいってくれているのだから活用しないはもったいない。