1949年生まれ、静岡県出身。1971年慶應大学法学部卒、同年山一證券入社。1985年新日本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本』(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。
八方の顔色うかがいながら石破内閣で株価はどうなる?
衆院選で自民・公明の与党が過半数過半数割れになったことで、国会運営が不安定化。石破政権は法案を1つ通すにも常に野党の顔色を見ながらになる。そんななかでキャスティングボートを握るのが国民民主党で、早くも同党が主張する「103万円の壁」が引き上げられることで合意された。今後の注目は、引き上げ額がどこまでになるかという点に移っている。
いずれにしても、働く人の手取が継続的に増え、結果として消費が伸び、国内経済に与える影響は大きく、このことが実際に改革日本を象徴する案件となるかが注目されるところ。
一方、「掉尾の一振(とうびのいっしん)」になるためには、2025年度予算と「103万円の壁」がどうなるかにある。
東京市場は期待と失望の狭間で一喜一憂することから、当面は上値が重い展開となる。加えて、12月に日銀金融政策決定会合で0.25%引き上げに踏み切るかも読みづらい状態にある。かといってこれ以上の円安・ドル高も政府も容認できない。
米国はトランプ氏に大統領就任が控えており、しかも上下院ともに共和党が過半数をもつ「トリプルレッド」。これでトランプ次期大統領の政策が通りやすい環境が仕上がっている。米国ではトランプ政権に対する期待も強く、市場の動きもご祝儀相場以上の強さを見せている。
ドル円の為替相場は、トランプ政権発足前の現状でもドル高進み、156円台というドル高が進んでいる。そこで12月のFRBの金融政策がトランプ政権発足前にどう動くかが注目される。米国が金利を下げるのか、日本が引き上げるのか、予想は綱引き状態である。
日本の上場企業の中間決算を見る限り東京市場は、大きな変化はなさそうに見えるが、株価の動向はソフトバンクの好業績に寄るところが大きく、業績相場に移行できそうにはない。ここしばらくは政策による期待感で動く相場展開の、「噂で買って事実で売る」という相場になりそうだ。
米国はというと、財務長官に指名された投資家のスコット・ベッセント氏、FRB議長の動向が注目点。パウエルFRB議長は2026年の任期満了までは続けることを公表しているが、トランプ次期大統領の政策にはインフレの懸念があり、パウエル議長は、これまで以上に慎重な判断に迫られる必要が出てくるだろう。
3万8000円を割り込むか否かが分かれ道
こうした環境下での東京市場は、テクニカル的には非常に難しい位置にある。
3万8000円を割込むことになると、トリプルトップを形成することになり、調整が長引くことになるだろう。13週線、26週線近辺での攻防も同じ不安を感じさせるものがある。
個別銘柄では、防衛関連銘柄を見ておきたい。というのも、ロシアのプーチン大統領が核ドクトリン改定による戦術核使用の可能性を示唆する動きを見せており、これが地政学リスクを想起させるからだ。
そのせいもあってか三菱重工(7011)、川崎重工(7012)、IHI(7013)、東京計器(7721)といった銘柄が投資マネーを吸引している。このほかには防衛省と取引実績のあるアジア航測(9233)で、増収増益に加えて4%程度の利回りも高く魅力的である。
IT関連では、米国のエヌビディア(NVDA)の注目の決算発表があり、事前のコンセンサスを上回る動きを見せた。
事前コンセンサスでは8~10月の売上げ増を前年同期比8割増、データセンター部門の売上げは100%増、最終利益は9割増と、期待される高いとされるハードルを今回も上回った。
しかし、市場の反応は今ひとつといった感がぬぐえない。エヌビディア関連では、AI向け次世代チップ「ブラックウェル」の動向も注目される。ただ電力消費問題という弱点も指摘されている。さらに、反独占禁止法違反の対象となる可能性も出だしており、継続的な株高に対しては疑問符が付き始めており、注意しておきたい。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。