企業でも進む「年賀状じまい」
年賀状の受け付けが12月15日から全国の郵便局で始まった。これを機に、街角にある郵便ポストに、通常は手紙・はがきの投函口に「年賀郵便」と書かれたシールが貼られ、ポストも年末仕様になっている。
年賀状が始まった1949年のこと。このときの発行枚数はおよそ1億8000万枚で、年々増え続け、1980年代に30億枚を突破、ピークは2003年で約44億6000万枚だった。その後マイナスに転じ、2025(令和7)年用年賀はがきの総発行枚数は、10億8000万枚まで減少している。
今では「年賀状じまい」という言葉は一般化しているが、この言葉が使われるようになったのは2010年前後とされる。団塊世代が一斉に定年期に入った時期あたりからこの動きが顕著になったようだ。
当然のことながら、こうした流れは企業にも広がってきている。
帝国データバンクが実施した「年賀状じまい」に関する企業アンケートによると、すでに年賀状の送付を取りやめた企業は58.1%と、全体の半数を超えた。さらに、2026年分から送付をやめる予定の企業も1割を超え、2026年の年賀状を送る企業は29.1%で3割を下回る見通しだ。
この調査は2025年12月に全国1205社を対象に実施されたもので、2023年以前に年賀状をやめた企業は22.0%、2024年からが15.4%、2025年からが10.4%となった。2024年の調査と比べると、「すでに年賀状じまい」をした企業は約9ポイント増えており、企業における年賀状離れが着実に進んでいるようだ。
「年賀状じまい」その背景にあるもの
その背景には、コストや手間の問題がある。郵便料金の値上げに伴う年賀はがきの価格上昇に加え、印刷や宛名管理、発送といった作業負担も大きい。また、取引先から年賀状じまいの案内を受け、「送らなくても支障はない」と判断する企業も多く、年賀状が形式的なものになっているとの認識も、見直しを後押ししているようだ。

その一方で、年始のあいさつ自体をやめるわけではない。
デジタル年賀状やメール、SNSによるメッセージ配信のほか、カレンダーやクリスマスカードを送るなど、別の形で取引先との関係を維持する動きもある。より実務に即したコミュニケーションを重視する姿勢がうかがえる。
一方、「年賀状じまいはしない」と回答した企業も29.0%ある。こうした企業の中には、年賀状を営業活動の一環と捉える声もある。年に一度のあいさつとして、関係の浅い取引先に存在を印象づける効果を期待するというものだ。送る企業が減るからこそ、年賀状が目に留まりやすくなるというわけだ。
効率化や合理性を優先する流れが主流となる一方で、年賀状ならではの役割を評価する企業も残る。2027年からやめるという企業もあり、「年賀状じまい」をする企業は増えていくとみられる。とはいえ、一部の企業は取引先と繋がる手段として、企業の年賀状を巡る対応は分かれつつある。
ちなみに、2010年当時のお年玉付き年賀はがきの料金は1枚53円、2026年用のお年玉付き年賀はがきの料金は85円(2025年用は63円)になっている。











