1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。
物価高騰が続くなか、家賃の値上げも他人事ではなくなってきた。そこで家賃を抑えようと転居を考える人も増えている。
新しい家の賃貸借契約を結ぼうと契約書に目を通していたところ、「契約更新ごとに家賃を5%値上げする」という一文が……。この一文、不当だと感じるが、削除を求めるべきか。それとも、どうせ法的に認められないだろうから、無視してこのまま契約してしまってよいのか。こうした自動値上げ条項は、果たして有効なのだろうか。
根拠のない自動値上げは、消費者契約法で無効になる
判断の分かれ目は、その5%という値上げに合理的な根拠があるかどうかにある。万が一、相応の根拠が示せるのであれば、「不当な契約」とは言い切れない。だが、更新のたびに機械的に家賃が上がっていく合理的な理由など、ふつうは存在しないものだ。
根拠のない一方的な値上げ条項は、消費者契約法が定める「消費者の利益を一方的に害する条項は無効である」に該当する。つまり、その条項そのものが、はじめから効力を持たない。仮にその一文が契約書に残ったまま契約してしまったとしても、借主がそれに従う義務は生じないということだ。条項は、空文にすぎない。
そもそも家賃は、合理性の有無にかかわらず家主が金額を定めることができる。だが、それは「契約時にいくらと定めるか」という話であって、契約後に更新のたび自動で吊り上げてよい、という話とは別だ。いったん合意した家賃を、一方的な取り決めで機械的に増やしていく――そこに正当な理由が示せないからこそ、この種の条項は無効と判断されるのである。物価高を口実にした便乗値上げと、根拠ある増額とは、はっきり分けて考える必要がある。
削除を求めるか、黙って契約するか
では、契約前に削除を求めるべきか。できることなら、最初から削除してもらうほうがよいのは言うまでもない。ただし、ここで注意が要る。条項が無効だからといって、その点をあまりに強く突きすぎると、家主が態度を硬化させ、「ならば貸さない」と契約そのものを拒んでくる可能性があるからだ。
そこで、どちらを優先するかという判断になる。入居を最優先するのであれば、あまりに強い要求は避け、いったん契約を成立させておくという選択もある。その代わり、実際に更新を迎えたときに、改めて値上げを拒む交渉を行えばよい。逆に、納得のいかない条項は一切のませたくないというのであれば、契約前にきちんと削除を求める。どちらがよいとは一概に言えず、最終的には借主自身の判断に委ねられる。
いずれにせよ、肝心なのは契約書に署名捺印する前に、その中身を最後の一行まで読み込んでおくことだ。理不尽な条項は、印を押す前であれば堂々と削除を求められる。「不当な条項などどうせ無効」と高をくくって読み飛ばせば、争う糸口すら自ら手放すことになりかねない。値上げ条項に気づけるかどうか――その一点が、後の安心を左右するということは肝に銘じておきたい。







