一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。
3種類の査定書が住宅ローン審査を動かす
具体的な名義変更をするために、まず妻の前夫に連絡を取り、持分の売却意思を確認しました。前夫の答えは「実は売りたかった。ただ、言い出す機会も方法もわからなかった」というものでした。
こうなれば次は資金計画です。
こうしたケースで金融機関が懸念するのは、「親族間売買」とみなされることです。というのも、債務の付け替えや贈与税リスクを監督官庁から指摘される可能性があり、審査に消極的になりやすいのです。
そのため、「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」の3種類で査定書を用意し、売買価格の客観性を担保しました。幸いなことに、いずれの査定額も前夫の住宅ローン残債を上回っており、売却益で完済できる見通しが立ちました。
住宅ローンの事前審査は相談者と取引のある信用金庫で実施。申込みから約10日で条件付きの承認が下りました。その条件が「違法増築部分の撤去」、つまり新築当初の間取りへの原状回復でした。
また、売買金額の妥当性をめぐる贈与税の有無、相談者側の住宅ローン控除の利用可否、前夫側の譲渡所得税の有無についても、それぞれ税務署で事前確認していただくようお願いしました。

売主と買主が一度も会わずに完結
違法増築の是正工事と木造築20年超という条件から耐震診断も実施。結果は、現行の耐震基準をクリアしており、耐震補強工事なしで耐震基準適合証明書を取得。相談者の住宅ローン控除の利用が可能となりました。
引き渡しにあたっては妻の前夫が事前に署名・押印を済ませるかたちで準備を整え、当日は相談者のローン実行と前夫への振り込み、前夫の既存ローンの完済が連動して進み、すべてが滞りなく完了しました。
売主の前夫と買主の相談者は、手続きの最初から最後まで一度も顔を合わせることなく取引を終えました。また、相談者は自己資金なしで持分を取得し、前夫も資金の持ち出しゼロで持分を処分することができました。
離婚後の不動産名義問題は、先送りにしても一切メリットはありません。持分売買の際のポイントは、税金と既存残債を考慮した「売買代金の設定」と、融資金額を踏まえた「住宅ローンの活用」です。
問題が動かせるうちに動いておくことが、家族を守る最善の策といえるでしょう。






