不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
AIやオンライン化が進む一方、不動産業界ではDXが本質的な変革に至っていない。検索で得られる条件と、住まい手が本当に知りたい生活情報との乖離はなぜ生まれるのか、その構造的背景とは
山下努2026/01/07
近年、不動産店のDX支援を手がける企業も現れている。
そこに切り込み始めたのが、不動産店のDX支援で注目されるベンチャーのファシロ(Facilo)。同社は2021年10月に超一級の人材が集まって起業した。
ファシロの看板商品のマイページの機能は操作が簡単・スピーディーで、物件を比較・検討しやすいという定評がある。的確でタイムリーな提案する一方、顧客のアクセス傾向を分析・予測する。それが不動産業界のDX化の先駆けなっている。
まだまだ進化の途上だが、それでもすでに最大手クラスの仲介業者から街角の中小業者まで、マイページを中心としたサービスは、全国で1500店舗以上が導入した、という。
導入している店舗では顧客への物件の提案時間を8割程度削減できるという。ここまでできるのは、不動産仲介の情報やコミュニケーションを一元化し、可視化できるからだという。

先行したDXを活用したサービスを生む源泉はどこにあるのか?
ファシロを起業したのが市川紘社長は、米国の不動産ポータルサイトとして第10位の規模だったMovoto.comを全米4位にまで引き上げ、米国で「Top 100 Leaders in Real Estate and Construction」(不動産・建設分野のリーダー百選)に選出された。
シリコンバレーでエンジニア経験を積んだ共同創業者の梅林泰孝取締役(CTO)はGoogleに入社し品質向上チームに参画。サイバーエージェントに転職後に、「AirTrack」(位置情報を活かして支援するAIターゲティング広告)の開発責任者として開発や戦略にも携わり、国内最大規模の位置情報プラットフォームに成長させた。
物件の中身を手に取る様に示すことができるDXとはいえ、顧客を説得するのは。物件や情報の中身(コンテンツ)だ。
そして、個別の顧客が知りたいことはうまく顕在化できず、未開拓だ。顧客の気がつかない地域の将来像もそのひとつであるといえる。
同社のサービスは、業務効率化や顧客対応の高度化に一定の成果を上げている。しかし、ただDXはツール導入で完結するものではない。最終的に問われるのは、それぞれの不動産事業者が「顧客が本当に知りたい情報とは何か」を見極め、それを提示できるかどうかである。
中長期の人口動態と不動産価値は、密接な関係にある。
過去の地価のトレンドは景気や物価、災害、開発の影響を差し引くと、ほとんどは人口動態に左右されるからだ。住宅に限れば、地価の大部分は、ほぼ人口動態が決めてしまう。 例えば、国連統計による世界人口ピークを迎える2085年には、日本の出生数は7万人台に落ち込む(社人研=国立社会保障・人口問題研究所)。不動産業界としては、こうした「寝た子を起こすような衝撃的なデータは入れたくない」こうしたデータを正面から示すことに、業界は慎重であり続けてきた。
「窓から地平線が見える物件」を当たり前に検索できる不動産物件の検索サイト。物件の資産性に見極めなどは技術の問題ではない。不動産業界が、顧客の本音や欲望にどこまで向き合えるか。その覚悟が、問われている。
この記事を書いた人
山下努経済アナリスト
不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
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