不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
AIやオンライン化が進む一方、不動産業界ではDXが本質的な変革に至っていない。検索で得られる条件と、住まい手が本当に知りたい生活情報との乖離はなぜ生まれるのか、その構造的背景とは
山下努2026/01/07
窓から見える景色、騒音、日照の角度、風通しといって、もっと生活にかかわる情報は「現地に行かなければ分からない」とされ、長らくデータベース化の対象外だった。しかし、物件を探す側の本音は、ユーザーが検索だけで細かな情報を把握できるようになれば、内見の数は減る。効率化が必ずしも業界の利益につながらないという構造が、DXを阻んできた側面は否定できない。

実際に神奈川県内の複数の不動産店を回り、「海の眺望」という条件まで踏み込んで相談してみると、応じられる店舗はごく一部に限られた。サーファー系の店以外、「海が見える」という視点でデータを十分にまとめている店はないように感じた。
多くの場合、そうしたデータの有無は営業担当者個人の経験や記憶に依存している。実際、「マンションの最上階だけど、窓から地平線が見えるのか?」「南向きと書いてあるが、実際に日差しはどの時間帯に入るのか?」「バルコニーからの風通しは?」「前の建物はどれくらいの高さ?」「駅まで徒歩10分とあるが、坂道なのか? 夜道は暗くないか?」といった顧客視点からぜひとも知りたいこだわり情報は、内見に行ってもすべてはわからないというのが現実だ。
本当に詳しいことが知りたければ、現地の物件近くに居住している人に話を聞く方法もある。
「ここの物件は国道に面しているので騒音対策で二重ガラスのサッシにしてあるが、海の波の音は聞こえない」
「エレベータが古く、速度が遅いので階段で降りた方が早いよ」
「あの部屋なら砂浜と江ノ島と富士山と太平洋の水平線が見える」
などといった細かいナマの情報が手に入る。実はそこまでやらなければ、中途半端な情報では、買い手や借り手の努力や発想、こだわりには勝てない。
とはいえ、こうしたサービスは技術的に不可能な話ではないだろう。360度カメラやドローン、AI画像解析を活用すれば、景観の抜けや採光条件を可視化することはできる。日照シミュレーションによって「〇月〇時にどれだけ光が入るか」を示すことも可能だ。問題は技術ではなく、業界が従来の仕組みにどこまで向き合えるかにある。
この記事を書いた人
山下努経済アナリスト
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