家賃値上げ、強制退去……賃貸契約トラブルに負けない消費者契約法の基礎知識

オーナーチェンジや物価高騰で賃貸契約トラブルが拡大。消費者契約法で守れる借家人の権利とは

大谷昭二2025/09/11

また、個人の家主と会社名義で住居として借家契約をした借家人は、たとえ住居目的であっても、契約の当事者が個人でなく会社名義なので、「消費者」には該当せず、この借家契約は「消費者契約」にはならない。

消費者契約で事業者行ってはいけないこと

では、借地借家契約が「消費者契約」の場合、事業者が行っていけない行為がある。

1)「不実告知」
重要事項について事実と異なることを告げる
2)「断定的判断の提供」
将来の価額、金額、価値の変動が不確実な事項について、断定的な言い方をして契約をすることはできない
3)「不利益事実の不告知」
ある重要事項やそれに関連する事項について、消費者の利益となることだけを強調し、不利益になることを隠して契約することはできまない

こんな要求は取り消しができる!

具体的には次のようなケースがある。

「地主・家主が今年は税金が上がったので賃料を上げてくれといってきたので、借地借家人は止むを得ないと思って値上に応じたが、実は税金は上がっていなかった」
賃料増額契約について公租公課額の増減は重要事項なので、この点で事実と異なることを告げられて増額を承諾した借地借家人は、増額合意を取消すことができる。

「更新料支払約束のない借地契約にもかかわらず、地主は更新料を要求した。その理由として、法律でも支払うことになっているし、自分の貸地の借地人は全員が払っていると説明した。
借地人は、しぶしぶ更新料を払うと約束してしたが、借地人の中には更新料を払っていない人も数人いたことがわかった」
この場合、支払約束のない更新料について支払義務があるという法律はないうえ、他の借地人全員が支払っているということも事実と異なっている。いずれも重要事項といえるので、この借地人は、更新料支払約束を取消すことができる。

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この記事を書いた人

大谷昭二

大谷昭二NPO法人日本住宅性能検査協会理事長/一般社団法人空き家流通促進機構会長/元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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