空き家の売却――立ちはだかる「現実」という壁

2022年に民法と不動産登記法が改正され、相続登記が義務化される法案が公布された。実際の義務化の目途は、24年春とされる。法律はできたが、空き家問題の根本的な解決にはなっておらず、実際に処分するにはさまざまな問題が潜む。地方の空き家所有が売却活動を行った体験談。

Gold beans.編集部2023/09/03

坪単価6万円の査定が3分の1に

秋山さんが相続した物件は、市町村合併前の旧町役場の近く、県道に面した宅地ということもあって「需要があるから、時間をかければ高く売れる」と助言してくれた人もいた。また、別の不動産業者によると「駅から数分だし、県道に面しているので坪10万円以上で売れるのでは?」ともいわれた。

そこでAさんは「売り地」という看板を出す方法もあると思ったものの、病弱な叔母がひとりで暮らす家もある。処分できるうちに売却しようと決心した。
しかし、実際に売却しようと動き出すと、「査定額=売却額ではない」という現実を目の当たりにする。

というのも、地元不動産業者の話の前提は、土地の広さが100坪以下の話だった。秋山さんが相続した家は、500坪あまりの広さがある土地だ。しかも、江戸時代の母屋や蔵、門などは取り壊したが、建売業者らの話では「それだけの広い土地を一括で売ろうとすると、広大地扱いでかなり減額されますよ」というのである。
実際、不動産業者が現地の確認などを行ったところ、大きく値引きされ、古家解体費を差し引いた売価は1000万円を大きく下回った。最も高い価格の公示地価の3分の1前後の価格で売却したのだった。

大きな土地は分割して、分譲地に

買った業者は、この土地を複数区画に分けて、駐車場付きの戸建て分譲住宅地にしてしまった。こうしたケースではその場合、土地を買い取った業者が利益を十分に確保できる最低ラインの価格を打診してくるらしい。

昔は立派だった田舎の御屋敷は、解体費がかさむうえに、土地は「広大宅地」の減額評価がなされがち。まさに地方の広すぎる土地の需要がない典型例である。
もちろん、土地の売却実績が豊富な不動産業者なら、高めの査定額になるだろうが、業者の実力で金額に差が出てきてしまう。高く売りたいと思っても、見知らぬ地方でいい値を付けてくれる不動産業者を探すのは難しいのだ。

空き家の処分には、さまざまなハードルがある。そして、頼れる不動産業者は少なく、結局は自らが動かなくてはならない。
これこそが空き家問題の解決が難しい理由と言えるだろう。

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