政府の太陽光発電政策を転換
12月23日、政府は「大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議」を開き、メガソーラー(大規模太陽光発電施設)に対する規制を強化する方針を打ち出した。具体的には地上設置の太陽光パネルについては、2027年度以降は売電価格への上乗せ補助への新たな支援を廃止する方針を打ち出した。
とはいえ、再エネ導入拡大の観点から、公共施設や工場などの屋根への設置を推進し、その支援を行っていくとする。しかし、屋上へのソーラーパネルの設置は耐荷重の問題もあり、現在のシリコンパネルは厳しい部分もある。そこでこうした制約を打開する技術として注目されているのが、フィルム状で軽量なペロブスカイト太陽電池だ。
発電だけではないペロブスカイト太陽電池のダブル効果
ペロブスカイト太陽電池の実証実験はさまざまなところで行われているが、その中でも最近発表されたものをまとめた。
■途上設置型は防災シートの役割も
建設分野の地上設置型では、奥村組が岩手大学と連携し、斜面災害対策と発電を両立する「太陽電池防災シート」の実証を開始している。
これは遮水シートにペロブスカイト太陽電池を貼り付け、雨水の浸透を抑えつつ発電する仕組み。斜面災害が年間約1,200件発生する日本において、防災インフラをエネルギー供給源として活用する新たな発想といえる。発電性能だけでなく、施工性や耐久性、防災効果を同時に検証しようというもの。

■屋上型は防水材と一体化
都市部での屋上設置型では、積水化学工業と積水ソーラーフィルムが福岡市と連携協定を締結。フィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証を加速させている。
こちらは都市部では大規模な再生可能エネルギーの設置が難しいという課題解決に向け、屋上防水材と一体化した施工や小学校体育館屋根への導入など、公共施設を活用した取り組みで、都市型「地産地消」創エネモデルの現実性を検証しようというもの。
これまでのシリコン型の太陽光電池のような重い架台を必要とせず、既存建物への設置が可能で、いわばストックの活用にもつながる。

■窓建材型は断熱・遮音効果
太陽光電池というと“屋根への設置”が思い浮かぶが、ペロブスカイト太陽電池は窓への設置でも発電する。
建物建材型では、YKK APが中国電力グループとともに、建材一体型太陽光発電(BIPV)の実証を開始した。内窓にペロブスカイト太陽電池を組み込んだ「HIROSHIMA ZERO BOX」では、発電と断熱・遮音機能を両立し、既存ビルへの後付けも想定したものだ。発電設備を「見せない」形で組み込むアプローチで、都市景観との親和性が高いものとしている。

経済産業省は2040年に約20ギガワット導入を目標に掲げ、量産化と耐久性向上が今後の焦点だ。斜面、屋根、窓へと広がる実証は、ここで紹介したものは、ペロブスカイト太陽電池が「具体的な導入試験」といえる。
さらに共通しているのは、太陽光発電+αということ。
地上設置型は「発電と防災シート」、屋上設置型は「発電と防水材と一体化」、建物建材型は「発電と断熱・遮音」2役の効果がある。
普及のカギは、量産コスト、長期信頼性、施工標準の確立だ。次世代太陽電池であるペロブスカイト太陽電池は今、まさに社会の現場で試されている。
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