北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。

【腎虚タイプ】中高年に多い冷え、腰痛なども伴うことも
水の巡りを担う腎の機能が低下している状態(腎虚)でもむくみが生じます。
冷え、腰痛や下肢の痛み、排尿障害、口内の乾燥、手足のほてりなどを伴うことがあり、中高年や虚弱体質の人にみられます。腎を補う漢方薬で症状を改善します。
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
【主な症状】疲れやすく、腰から下が冷えて重だるく痛みやしびれを感じることもあります。主に下半身の浮腫みが気になる方に。尿量減少・頻尿・夜間尿などの排尿トラブル、腰痛、時に口の渇きを伴うこともあります。
【効果】筋肉や骨に栄養分を与え、腎のパワーを益すことで水分代謝を改善する「八味地黄丸(ハチミジオウガン)」に膀胱を通じて尿を排泄する力を強める生薬が加わることによりむくみを改善します。
【成分の効能】衰えた腎の機能を補う「八味地黄丸」に利水効果のある車前子(シャゼンシ)と諸薬を下に導く牛膝(ゴシツ)が協調して働くことで水分代謝が改善されます。
真武湯(シンブトウ)
【主な症状】比較的やせ型で体温が低く、冷えと共に元気がなく、めまいやふらつきが気になる、軟便傾向の方に。
【効果】体力の低下などによりパワー不足となり新陳代謝が低下し、水飲代謝も失調してむくみが起こります。からだの深部を温めることで腎のパワーをアップして、からだの余分な水を散らすことで症状を改善します。
【成分の効能】附子(ブシ)と生姜(ショウキョウ)でからだを温め、茯苓、白朮で余分な水を追い出してむくみを改善します。
【ワンポイントアドバイス】
1)筋肉は水分を体外に押し出すポンプの役割があるので、適度な運動で筋肉を増やす
2)入浴・マッサージでからだを温める
3)塩分や糖分は水分をため込む性質があるので控えめに
4)むくみ解消に役立つ食物を積極的に摂取
*カリウムを多く含む食材:ほうれん草、キャベツ、とまと、リンゴ、バナナ、アボガド、海苔、
*利尿作用のある食材:スイカ、きゅうり、小豆、冬瓜、とうもろこし
*血行を改善する食材:タマネギ、ニンジン、納豆、ブロッコリー、生姜等
大量の水分摂取はむくみの原因になるので、一度に摂取するのではなく、少量をこまめに摂取することがポイントです。
次回は「排尿トラブル」についての漢方薬を紹介します。
