不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
家電量販店から住宅産業への参入したヤマダ。いまや傘下企業は50社をあまりにのぼる。そのヤマダがこの先に描く戦略とは何か。
山下努2025/01/08
課題はショッピングモールのような幅広い集客だ。大規模な実験店舗の前橋吉岡店(約4000坪)では、膨大な敷地に住宅展示場などを設けた。
ここはまさに「くらしのテーマパーク」といった感じで、ここに行けば家電、家具、インテリア、太陽光発電、EV、蓄電池などさまざまな暮らしの品々をまとめて購入できる。目玉はテスラ製の蓄電池で、この蓄電池はヤマダでしか販売していないので、家電量販店の差別化にもつながりそうだ。
昨今、郊外の戸建て住宅が強盗に襲われる事件が頻発しているが、こうした事件が頻発する直前の2024年3月には、警備業のALSOKと提携。ホームセキュリティにもいち早く取り組んでいる。
また、社会問題となってきている空家対策については、子会社の「家守り」が対応。定期的に訪問し、家をチェックし、管理するという「空き家見守りサービス」を展開している。
住宅販売方法は独特で、健康関連も家電や美容製品のように「健康寿命を延ばす家」と位置づけ、現場の営業マンに対しては「住宅を箱としてだけではなく、健康な暮らしを彩って守るデバイスの集合体として売る姿勢を身につけさせたい」と清村社長は話す。
とはいえ、こうした業務拡大には反動もある。「ダボハゼ」にも見える超多角経営(?)に消極的で抵抗を感じ、転職してしまう社員もいないわけではないのだ。セールストークがモノをいう住宅と家電の販売の営業スタイルは親和性が高いが、住宅販売は保守的だけに、個々の営業マンは水と油というほど違うらしい。そこで会社の縦割り構造を打破し、家電と住宅を両建てで幅広く考えることができる人材をつくることが課題になっている。
このように住宅に力を入れるヤマダが向かう方向には、前にも指摘したようにデベロッパー業も視野に入る。ただ、マンションの建設や販売についても構想はあるものの、大きな柱とは考えていない。ビル建設や大規模商業施設のプロデュースは別だという。
「異業種進出といっても、あくまでも「くらしまるごと戦略」が基軸だ」
人口減少が進む日本社会において、「くらしまるごと」なら、冠婚葬祭市場への参入も将来は検討の余地があるだろう。
婚姻数の減少が地域の少子化につながり、家電や住宅需要を蝕み、空き家を増やすからだ。
2030年には、団塊世代が80歳代に突入し多死社会がやってくる。葬祭サービスの専門業者もM&Aなどで流動化の兆しがある。
実際、2024年12月には中国資本傘下の火葬企業の「東京博善」が、これまでの暗黙のルールを破って葬儀事業に参入を果たしている。
揺りかごから墓場までのヤマダはあらゆる領域の新事業に手を伸ばすのか。稀有なカテゴリーキラーの2025年の動きを注視したい。
この記事を書いた人
山下努経済アナリスト
不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
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