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段階増額の修繕積立金は30年で3.5倍に 値上げ議案に賛成する前に見る3つの数字

修繕積立金の値上げ議案が総会に出てきたとき、議案書にはこの先いくらまで上がるかが書かれていないことが多い。国土交通省のガイドラインが2024年に示した目安を物差しに、賛否を決める前に確かめたい3つの数字を整理した。

複眼FPラボ2026/10/07

段階増額の修繕積立金は30年で3.5倍に 値上げ議案に賛成する前に見る3つの数字
  • 段階増額の積立金は国交省のモデルケースで30年3.5倍に上がる
  • 目安は初期額が均等額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内
  • 倍率・㎡単価・大規模修繕の年の残高の3つで計画の妥当性を測る

この記事でわかること

段階増額で積立金が30年に3.5倍になる仕組み
国交省の新しい目安「0.6倍・1.1倍」で計画を測る
1平方メートルあたりの月額で高い・安いを比べる
大規模修繕の年に残高が足りるかを確かめる
欠席や白紙の委任状が決議に与える影響
総会の前に取り寄せたい収支表と質問のしかた

値上げ議案に「最後はいくらか」は書かれていない

分譲マンションの毎月の管理費、修繕積立金は必須だ。物価が上がる中でこれらの値上げは避けて通れない。
中でも修繕積立金は「長期修繕計画に沿った段階的な増額」とされることが一般的。しかし、この値上げが何回続き、最後にいくらになるのかは、議案書の1枚目には書かれていないことが多い。

段階増額積立方式は、新築時の積立金を安く設定し、5年ごとなどに引き上げていく。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(2024年6月改定)が載せるモデルケースでは、初年度の月6000円が5年ごとに3000円ずつ上がり、26年目からは月2万1000円、30年で3.5倍になるという。仮に同じ522万円を均等に集めれば、月1万4500円で毎月の負担はずっと同じになる。

しかし、入口の月額が安いほうが販売しやすいため、デベロッパーは新築の分譲現場でこの方式を選びやすい。つまり、値上げは想定内で、最初から計画に織り込まれているのだ。問われるのは、その上がり方が妥当かどうかになる。

段階増額には弱点がある。値上げのたびに総会の決議がいるため、住民の高齢化や年金暮らしの世帯の増加で合意が取れなくなると、計画どおりに上がらない。上がらなければ、その分だけ将来の工事資金が足りなくなる。新築時に安く始めたツケが、築20年、30年のころに回ってくる構造だ。

1つ目の数字は「均等額の何倍か」

2024年の改定で、ガイドラインは段階増額の上がり方に目安を置いた。均等に積み立てた場合の月額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内とするというものだ。入口を安くしすぎず、出口を高くしすぎない。上がり幅そのものを小さくして、合意が取れずに積み立てが止まる事態を防ぐ狙いがある。

基準額は長期修繕計画の収支表から出せる。計画期間中に集める修繕積立金の総額を戸当たりに直し、計画の月数で割ればいい。30年計画で戸当たり540万円なら、540万円÷360か月で月1万5000円。0.6倍は9000円、1.1倍は1万6500円になる。

今回の議案で1万4000円に上がっても、計画表の最後が2万4000円なら、最終額は基準額の1.6倍だ。目安を大きく超えており、今回の値上げを通しても、まだ上がる余地が残っていることになる。モデルケースの2万1000円も1.45倍で、ガイドライン自身の図が新しい目安を満たしていない。

2つ目の数字は「1平方メートルあたりいくらか」

大規模修繕工事で足場に覆われたマンションの外観

自分のマンションの積立金が高いのか安いのかは、専有面積あたりの月額に直すと比べられる。ガイドラインは366事例をもとに、計画期間全体の平均額の目安を示している。20階未満で延床面積5000平方メートル未満なら平均335円、20階以上なら平均338円(いずれも1平方メートルあたりの月額で、機械式駐車場分を除く)だ。

70平方メートルの住戸に335円を当てると、月2万3450円になる。値上げ後の1万4000円でも1平方メートルあたり200円で、目安の幅(235〜430円)の下限を割っている。計画そのものが工事費を小さく見積もっていれば、今回の値上げは最後の値上げにはならない。

逆に目安を大きく上回るなら、管理会社が出した工事費の見積もりが過大でないかを見る番だ。

3つ目の数字は「大規模修繕の年の残高」

収支表で最も見落とされやすいのが、大規模修繕工事を行う年の積立残高だ。12〜15年ごとの外壁補修や屋上防水、給排水管の更新といった大きな工事の年に、残高がマイナスになっていないか。マイナスなら、その年に一時金の徴収か金融機関からの借り入れが前提になっている。

値上げ幅を抑えた議案ほど、この穴が後ろの年に回されている。今回の値上げ額だけでなく、計画期間の最後まで残高の推移を追うと、議案の性格がはっきりする。

たとえば築12年目と24年目に大規模修繕を予定する計画なら、1回目は新築から積み立てた分で賄えても、2回目は給排水管やエレベーターの更新が重なり、工事費が1回目を大きく上回ることが多い。収支表の24年目前後の残高と、その時点の月額を見比べておくと、今回の値上げが2回目の工事に間に合う水準かどうかがわかる。

決議はいったい誰の賛成で決まるのか

国交省の標準管理規約では、修繕積立金の額の変更は総会の普通決議で決まる。出席した組合員の議決権の過半数だ。欠席して委任状を白紙で出すと、議長への委任として扱われる規約が多く、議案に賛成した票に加わることになる。

2026年4月に施行された改正区分所有法では、所在のわからない所有者を決議の母数から外す手続きが設けられ、出席者の多数決で決められる範囲も広がった。総会に出ない人の声は、これまで以上に結果に表れにくくなっている。

総会の前にそろえておきたいもの

議案書が届いたら、まず理事会や管理会社に長期修繕計画の収支表を求めたい。議案書には今回の値上げ額しか載っていなくても、収支表には計画期間の最後までの月額と残高が並んでいる。3つの数字はすべて、この1枚から計算できる。

計画がいつ作られたかも確かめておく。国交省の長期修繕計画のガイドラインは、5年程度ごとに計画を見直すよう求めている。最後の見直しから年数がたっていれば、工事費の上昇が反映されておらず、今回の値上げのあとにも追加の値上げが控えている可能性が高い。

疑問があれば、総会の前に書面で質問を出しておくと、当日の議事で回答を求めやすい。計画の妥当性を第三者に見てもらいたいときは、マンション管理士に相談する方法もある。

値上げに反対することは、修繕を先送りすることと同じではない。上がり方が目安を外れた計画なら、長期修繕計画の見直しを求めるという道もある。月数千円の値上げ議案は、30年分の計画表を読み直す機会でもある。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、個別のマンションの管理や議決についての助言ではありません。管理規約の定めはマンションごとに異なります。

 

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マクロ経済の潮流から日々の暮らしに寄り添うお金の話まで――複眼的な視点で「生活」と「ファイナンス」を読み解く実践的チーム。メンバーは、生活者のリアルを綴るライター、現場感覚を持つファイナンシャルプランナー、そして個人に最も近い立場でライフリスクと向き合う生命保険・損害保険の営業パーソン。異なる立場と経験から、単なる数字や制度にとどまらない“生きた情報”を発信している。

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