1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。
似て非なる保証金と敷金
一方で、家賃の大幅な値上がりを受けて、引っ越しをする人も増えている。
日本情報クリエイト(本社・宮崎県)の6月の家賃動向調査によれば、東京23区では広い面積帯の物件では空室率がわずかながら悪化しており、東京23区の賃貸住宅市場に変調の兆しがみられるという。
こうした背景もあって、引っ越しを考えている人は増加傾向にあるようだ。
しかし、いざ引っ越し先を決めて、契約になった際に示されるのが「保証金」と「敷金」というもの。引っ越しにあたっての、この出費は、結構痛い。そもそも保証金と資金とはなんなのだろうか。
保証金と敷金は似ていても同じではない。
まず敷金は、賃料や原状回復費など賃借人の債務を担保するために預けるお金のこと。
賃貸の契約が終わり部屋を明け渡した時点で、滞納分や必要な費用を差し引き、残りは返金されるのが原則である。仮に滞納があれば貸主は敷金から充当でき、第三者が差押えや債権譲渡を主張しても、敷金は担保金である以上、まず貸主の債権が優先される、と理解しておけばよい。敷金の位置づけは比較的はっきりしている。
保証金の扱いは契約書を確認
一方、保証金は、同じ「預り金」といわれるが、その性格が一様ではない。
実際には、ビルの規模や契約の枠組み、地域の慣行によって扱いが変わりやすく、そこがトラブルの原因になりがちなのである。また、貸主の債権を支える意味合いに加えて、賃借人が貸主へ資金を貸す「金銭消費貸借」の側面を帯びることもある。
敷金が通常は賃料の数か月分、多くても20か月程度なのに対し、建築費の一部をまかなう目的で「建設協力金」として保証金を差し入れる実務が広がった経緯もある。
加えて、保証金が賃貸借契約の条項に組み込まれる場合もあれば、別立ての金銭消費貸借契約として扱われる場合もある。
つまり、権利金とは異なり、将来返還されるのが通例だが、返還の時期や方法、どの費用に充当できるか、利息の有無などは双方の合意次第という部分もある。
結局のところ、敷金は「明確な担保金」、保証金は「担保と資金供与が交わるお金」と実務的には理解しえおくとよいだろう。
安心して賃貸契約・退去をするために、契約書で用語と取り扱いを具体的に書き分け、運用ルールを事前に明文化しておくことが肝要だ。