この記事でわかること
50代の見直しは保障を「引く」作業になる
教育費・団信・遺族年金で死亡保障の必要額を測る
2028年の遺族年金改正が夫婦に与える影響
55歳会社員の家庭で必要保障額を試算する
高額療養費を土台に医療保険の重複を外す
がん保険は通院治療と収入減に備える形へ
更新型の保険は保険料が跳ね上がる前に判断する
解約より先に新しい保障と減額を確かめる
50代の保険は「足す」より「引く」
保険を見直すと聞くと、足りない保障を探す作業を思い浮かべる。だが50代の見直しは、多くの場合その逆になる。子どもが独立し、住宅ローンの残りが見えてくると、30代や40代に入った保障の多くが役目を終えているからだ。
見直しは、死亡保障・医療保険・がん保険の順に進めると整理しやすい。金額が大きいものから手を付けるのが、保険料を減らす近道になる。
死亡保障は「いくら足りないか」で測る
死亡保障に必要な額は、遺された家族のこれからの支出から、入ってくるお金を引いた差額で決まる。
50代で大きいのは、子どもの教育費がほぼ終わっていることだ。大学の学費を払い終えていれば、死亡保障のうち教育費に充てていた部分は必要なくなる。
次に住宅ローンだ。ローンを組むときに入った団体信用生命保険があれば、本人が亡くなった時点で残りのローンは完済される。家族の住まいの費用は、家賃ではなく固定資産税と修繕費だけになる。
入ってくるお金の柱は遺族年金だ。会社員が亡くなると、配偶者には遺族厚生年金が支払われる。目安は、本人が受け取るはずだった厚生年金(報酬比例部分)の4分の3だ。
この3つを当てはめると、子どもが独立した50代の夫婦では、必要な死亡保障が数千万円から数百万円に下がることが珍しくない。必要とされるのは葬儀費用と、配偶者が年金を受け取るまでのつなぎの生活費が中心になる。
遺族年金の改正は50代にどう効くか
2025年6月に成立した年金制度改正法で、遺族厚生年金の仕組みが変わる。子どものいない60歳未満の配偶者について、受給を原則5年の有期にする見直しで、2028年4月から実施される。有期になる代わりに、5年間の年金額は増える。
女性は2028年度に40歳未満の人から始め、20年かけて対象年齢を引き上げていくため、いまの50代の妻が影響を受けることはない。一方で、これまで妻を亡くした夫は、55歳以上でなければ遺族厚生年金を受け取れなかった。見直し後は、60歳未満の夫も5年の有期給付を受けられるようになる。
夫婦のどちらが亡くなった場合に家計がどうなるかを、両方向で一度確かめておきたい。
必要な額をざっくり計算してみる

数字に置き換えてみると、見直しの幅がつかみやすい。55歳の会社員の夫と52歳の妻、子どもは独立し、住宅ローンは団体信用生命保険つきという家庭で考える。
夫が亡くなったあと、妻の生活費が月20万円かかるとする。遺族厚生年金が月10万円出るなら、足りないのは月10万円。妻が自分の老齢年金を受け取り始める65歳までの13年間で、1560万円になる。ここに葬儀費用などの200万円を足し、貯蓄の1000万円を引くと、必要な死亡保障は約760万円だ。
30代で入った3000万円の定期保険を続けているなら、2000万円以上が過剰な計算になる。妻が働いて収入があれば、必要な額はさらに小さくなる。遺族厚生年金の見込み額は、ねんきん定期便の厚生年金の額をもとに目安をつけられる。
医療保険は高額療養費が土台
医療保険の見直しで最初に押さえるべきは、公的医療保険の高額療養費制度だ。1か月の医療費の自己負担には上限があり、年収約370万〜770万円の人なら2026年8月から月8万5800円が基本の上限になった。今回の見直しで、1年間の自己負担にも上限ができた。
入院した場合も、医療費そのものはこの上限で抑えられる。民間の医療保険が補うのは、差額ベッド代や食事代、仕事を休んだ間の収入減といった、公的保険の外にある費用だ。
外していいのは、入院日額型の医療保険に複数入っている場合の重複分だ。入院日数は短くなる傾向が続いており、1日いくらの給付を何本も重ねても、受け取れる額は思ったほど大きくならない。手元に医療費として100万円程度の貯蓄があれば、日額の保障は1本で足りる場合が多い。
がん保険は「通院」と「収入」に備える
がん保険は、外すよりその中身を確かめたい保険だ。がんの治療は入院から通院へと移っており、抗がん剤や放射線の治療を外来で長く続けるケースが増えている。入院を前提にした古いがん保険では、通院の治療に給付が出ないことがある。
50代で見直すなら、がんと診断されたときにまとまった一時金が出る保険が使いやすい。治療費だけでなく、働き方を変えたときの収入減にも充てられるからだ。先進医療の特約は保険料が月100円前後と安く、残しておいて損はないだろう。
更新型の定期保険は60歳前に判断を
最後に確かめたいのが、更新のある保険だ。10年ごとに更新する定期保険や医療保険は、更新のたびに、年齢に応じて保険料が上がる。50代や60代の更新では、保険料が大きく跳ね上がることがある。
必要な死亡保障が小さくなっているなら、更新の前に保障額を減らすか、解約して終身保険や貯蓄に置き換えるかを判断する。更新の通知が届いてから考えると、比べる時間が足りない。
解約は「新しい保障に入れてから」
見直しで最も避けたいのは、先に古い保険を解約してしまうことだ。50代になると、健康診断の結果や持病によって、新しい保険に入れなかったり、条件付きになったりすることがある。乗り換えるなら、新しい保険の審査が通り、保障が始まったのを確かめてから古い保険を解約する。
保障額を減らすだけなら、解約せずに減額という方法もある。いまの保険のまま保険料を下げられ、健康状態を改めて告知する必要もない。保険会社や担当者に、減額した場合の保険料を出してもらうところから始めるとよい。
保険は、入ったときの家族の形を前提に組み立てられている。家族の形が変わった50代は、保険証券を家族の今の姿と並べてみる時期だ。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の加入・解約を勧めるものではありません。保障の内容や必要額は契約内容やご家庭の状況によって異なります。
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