【倒産急増 人材派遣】人手不足なのに倒産が増えている背景にあるもの

手不足の解消手段として重要な役割を果たしてきた人材派遣業。しかし、コロナ禍が明け経済がが動き出すと倒産が急増。人材派遣業界の課題とその解決策を探る。

立川昭吾2024/06/20

人材派遣会社の4割は収益が悪化

23年9月「新しい資本主義実現会議」で岸田首相は「同一労働・同一賃金制について、対応が不十分な企業に対して指導を行う」と強調した

人手不足だから、人材派遣会社は儲かっているだろうと思われですが、実は人材派遣会社の4割は収益が悪化しています。さらに派遣会社は、企業規模の大きさが信用力になっているため、ある程度の規模がないと、人材の派遣を求める企業からの信用が薄くなり、これも経営を厳しくさせる要因になっています。

一方、派遣会社も、お金をかけて人材確保をしたいわけですが、2021年4月から施行された働き方改革によって、より細かいルールが作られました。これによって大規模な人材派遣会社が有利になるという、人材派遣業界内での格差も生じています。

その1つが「同一労働・同一賃金」で、これが義務付けされたことによって、派遣登録者の教育訓練が義務化されました。さらにこれまでなかったような派遣先での待遇、労使協定などが出てきて、これに対応できない中・小規模の人材派遣会社はさらに厳しい経営に陥っています。

人材派遣業にとって一番の財産は、やっぱり派遣する人で、登録スタッフが多いかどうかにかかっています。派遣登録者をいかに多く派遣するかが会社の浮沈にかかわります。しかし、人材派遣全体で見ると、実は企業の派遣社員の求は減少傾向にあります。ここだけを見ると、現在の社会成長、経済成長と逆方向を向いているように思います。

こういう状況の中では、人材派遣会社の企業規模による格差が生まれ、大規模な人材派遣会社は生き残ることができますが、中小の人材派遣会社は淘汰されます。
この状況を打開するには、会社の体制を立て直さなければならず、それができなれば、あっという間に負け組になってしまうというのが人材派遣業界の実態なのです。

さらに人材派遣会社は、資産があまりありません。そのため借入金が多重になる危険があります。今は手形決済がなくなったので「不渡りで倒産」ということはほとんどありませんが、突然、経営者が雲隠れしてしまい、 派遣社員への給与の未払い、さらに源泉税など税金、社会保険料となどを運転資金に使ってどうにもならず、最終的には経営者が、“夜逃げ”してしまうということもあります。

今や企業にとって人材派遣はなくてはならない、人材確保の重要な方法になっています。
この業界を守り、健全に成長させることは、これからの日本経済を発展させることに欠かせません。厳しい状況にある人材派遣会社をどう再生すればよいか、考えていく時期になっています。

立川昭吾の企業再生チャンネル「【なぜ?】人材派遣会社 倒産急増中!」より

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立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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