不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
図書館を地下に、テニスコートを地上に――。文京区の「竹早公園・小石川図書館一体整備計画」に疑問の声。子どもや区民の居場所をどう守るのか、公共性が問われている。
山下努2025/11/01

こうしたことが許されてきたのも、成澤廣修区長の5期20年に及ぶ多選の弊害ではないかと指摘されている。しかも、成澤区長は、25歳で区議に当選。当時、最年少区議として注目された。その区議時代も含めれば30年間にわたり文京区政にたずさわってきており、成澤区長を“文京区のドン”という人もいる。
何もなければ2027年には区長選があるが、成澤区長も6期目を目指しており、文京区のドンといわれても、おかしくあるまい。
とはいえ、その区長選挙では、この「竹早公園・小石川図書館一体的整備基本計画」が選挙の争点になる可能性も指摘されている。
そんな成澤区長は、2025年春の区議会一般質問で、竹早公園・小石川図書館の一体的整備についてと問われ、次のように答えている。
「昨年(2024年)1月に基本計画の中間のまとめを公表して以来、多くのご意見をいただき、区民ミーティングを行ってまいりました。これまでにさまざまな立場の皆様からいただいたご意見・ご要望、課題の中には、さらに十分な調査や検証を行った上で、丁寧な説明が必要なものがあると認識しております」としたうえで、「そのため予定していた3回目の区民ミーティングについては一旦見送ることとし、課題等について改めて整理してまいりたい」
と一時棚上げとする姿勢を見せていた。
しかし、区の見解は、あくまでも「図書館の敷地を公園に組み込むことにより、公園面積の拡充や利用者の利便性向上などの利点を見出し、一体的に整備する」というものに変わりはない。
そして、「都市計画公園である竹早公園に図書館の敷地を組み込む都市計画変更を前提とした一体的整備が、公園面積の拡充や利用者の利便性の向上などにつながる。魅力ある公園づくりを進めつつ、文化的で豊かな生活を支えるスポーツ活動や学びの拠点の整備について掲げ、調和のとれた空間で多様な人の交流や賑わいの創出を目指す」としている。

これでは住民が危惧するように「コートを1面減らして、図書館は地下化でスペースを確保する」といった大枠には手をつけず、結局のところ「妥協の産物」になる可能性がある。
こうなっては住民と区とのテニスコートをめぐる意見のラリーの応酬にはならず、現状では区側がドロップショットでかわそうという姿勢に感じられる。
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山下努経済アナリスト
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