不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
図書館を地下に、テニスコートを地上に――。文京区の「竹早公園・小石川図書館一体整備計画」に疑問の声。子どもや区民の居場所をどう守るのか、公共性が問われている。
山下努2025/11/01
このテニスクラブは2023年に区に対して「図書館および公園の一体化プロジェクトに関する希望」と題する要望書を出しており、その内容も「テニスコート5面を前提に、クラブハウスを図書館の1階に」というものだった。
このことは公表されていなかったが、2024年末に住民側の情報公開請求によって、その内容が明らかになるなど不透明な部分が多い。
住民で作る「竹早公園・小石川図書館を考える会」では、この計画そのものが「テニスコートありきの整備構想で、図書館にテニスコート向け施設を入居させるために、図書館が地下に追いやられたのではないか」と見立てている。

実際、出来上がった区の中間まとめでは、これまで図書館とは切り離されていたクラブハウスと図書館が要望通り一体になっており、加えて一番使い勝手の良い1階部分は、テニスコート利用者向けの「更衣室、シャワールーム、飲食可能なラウンジ」になっていた。その結果、1階には図書館としての機能はほとんどなく、図書館のメインフロアは地下1階で、クラブハウスの下に図書館が付属しているというイメージだ。
しかも、区の計画案では、地上部の面積が600㎡であるのに対して地下フロアを2300㎡にして、「地上部分の建物面積を最小化し、公園面積を最大化できる」として「◎」の高評価をしていた。
この計画に対する住民からのパブリック・コメントでは大半がテニスコートの縮小と多目的化を望む声が寄せられた。そして、そうした署名も1800人分を超えた。
パブリック・コメントには「公園にはテニス以外のスポーツ施設は検討されてない」「バスケもフットサルもできず、予約なく自由に使える球技スペースもない。ボール遊びはできないのか」「子どもたちが予約することなく自由にボール遊びできる場所が不可欠」という意見も寄せられている。
これを受けてこの計画に反対を表明している竹早公園・小石川図書館を考える会の住民向け資料では、次のような主張が記されている。
「百年先まで考えたまちづくりを」
「子どもたちにもっと遊び場を」
「テニスコート中心からみんなに開かれた竹早公園へ」
「テニス専用でなく、こども優先の多目的ボール遊び場を」
「地下図書館化にNO! 居心地の良い図書館を!」
「多様なスポーツニーズに適う多目的広場の整備を!」
反対運動を展開する考える会は、見直しの声が高まる中で、計画見直しが5面あるテニスコートを4面に削る程度を落としどころにされてしまうのではないか」と警戒感を持っている。
というのも考える会では、これまで区に対して情報公開請や監査請求、請願などを行ってきていおり、それによってこれまで一般住民の知らないことが次々と出てきたからだ。
具体的には、平日は朝6時または6時半~8時まで、土日は朝6時ごろから10時まで、前述のテニスクラブが特権的にコートを利用していたということが明らかになっている。
いずれの時間帯も、このテニスクラブ以外の区民は使えない。しかも、通常は2か月前から申し込み、抽選に当たらなければテニスコートは利用できないのだが、このテニスクラブのメンバーは、年会費1万2000円で、毎朝使い放題だったという。また、テニスクラブは社会教育関係団体として、コートの使用料金も3割引という格安で利用していたこともわかっている。
考える会では「営業時間外に区民一般の公平な利用機会を廃止して、特定の個人や団体に対してのみ貸し出すことは不公平で、公共性を損なう」と指摘。「特定の団体のみに、毎朝営業時間外の使用を認め、団体利用が規定上できないはずの土日曜日に通年優先予約を認めてきたことは、区の協定書に違反し、違法である」として住民監査請求を行い、現在は、こうした特権的な扱いは廃止になっている。
この記事を書いた人
山下努経済アナリスト
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